ホンダ・スペック3パワーユニット、やや不発
2018年のF1GPも残すところ2戦になった。ホンダは、21戦中の第20戦ブラジルGPに、最新仕様のスペック3を本格投入した。すでに、9月のロシアGPで搭載されたが、前戦のメキシコでは、2300mの標高のメキシコシティのコースが、これまで実績のない状況下にあることから、旧タイプに戻して闘うことにしていた。
一説には、35馬力の向上と言われるスペック3がどんなポテンシャルを発揮するのか、空力のアップデイトもうまく進んだといわれるトロロッソSTR13の進化と併せて、ブラジルGPの予選が期待されていた。予選を前にしたフリー走行3で、ピエール・ガスリーがサクッと9番手タイムを記録し、ますます期待を高めていた。しかし、待っていたのは肩すかしだった。
予選Q1は、ドライコンディションで始まったが、直ぐに雨が降るという確度の高い予想が出ていた。降り始める前にタイムを出しておきたい。その思いから、セッション開始前のピットレーン出口にマシンがズラリと並んだ。しかし、その列にトロロッソの2台だけがいなかった。チームは、混雑渋滞を嫌って、ピエール・ガスリーとブレンダン・ハートレーを遅れてコースインさせる作戦を採ったのだ。
だが石橋をたたくこの作戦は、外れた。二人がコースインしてタイヤを暖めてアタックに入ったタイミングで雨が降って万事休す。ガスリーはその後のアタックでなんとかQ2進出を引っ張り込んだが、この日29歳の誕生日を迎えたブレンダン・ハートレーは、Q1ノックアウトの仕打ちが待っていた。
雨の可能性が低いと見たトロロッソ。他が全車即座にアタックした状況の中で、これは残念ながら判断ミスと言わざるを得なかった。それでもピエール・ガスリーは12番手のタイムを2度目のアタックでひねり出し、スペック3のポテンシャルを見せてくれた。だがブレンダン・ハートレーは0.021秒足らずにノックアウトを喫した。しがみついてもなんとかしたい、という執念深さが足らないことがハートレーの弱点と言われているが、重要な局面でフラットスポットを作ってしまったことよりも、執念深さが足らない結果にも見えた。
木曜日の会見でハートレーは、ガスリーとの戦績を対比する質問に対して、「F1はライバー一人の闘いではなく、チーム戦としての結果がデータとして残るので、表面に見えているデータが正しいとは思いません」とコメントした。残り2戦でチームを去るハートレーだが、悪いのは自分ではないと聞こえてしまうコメントは、チームへの信頼感が感じられず、違和感があった。
他チームと同じタイミングでコースインしていたら0.021秒差は、ひっくり返って、Q2に行けたかもしれなかった。けれど、レースにタラレバはない。残るは2戦。2017ルマン24時間ウィナーは、苦しい立場に追い込まれている。
[STINGER]山口正己
photo by Honda