トロロッソ・ホンダとレッドブル・ホンダの力関係とF1シーズン
ホンダのパワーユニットを搭載するトロロッソとレッドブルは、F1合同テストの段階でトロロッソがレッドブルを陵駕する多力関係になっていることが分かったが、ここから先、勢力図はどうなるのだろうか。
F1はシリーズ戦で1戦だけの勝負ではない。その観点から、2チームの大方の流れを想像することができる。
2019年のF1GPは年間21レースのシリーズとして年間チャンピオンを争う。シリーズ戦であることをどう考えるかによって、マシンの目標レベルの設定が変わり、その目標設定によって、熟成期間や開発の進捗状況が変化する。
強いチームほど、目標設定が高くなるのはいうまでもない。同じホンダのパワーユニットを搭載するトロロッソとレッドブルは、ちょうど両極端の関係で2019年シーズンの開始を待っている。
オーソドックスで冒険をしていないトロロッソSTR14と、アドリアン・ニューウェイという鬼才が全力を投入し、高い目標設定でデザインされたレッドブルRB15。トロロッソは、去年のレッドブルを流用し、生まれつき完成度が高いマシンとして誕生。一方のレッドブルRB15は、高い目標設定で設計され、こなれるまでに時間がかかる。
トロロッソは最初からそれなり以上の速さが期待でき、レッドブルはポテンシャルを100%発揮できるようになるまでに時間がかかる、と考えられる。開幕戦のオーストラリアから数戦で、この両極端のマシンに明確な差が出る、と想像できる。
トロロッソは開幕戦から全開モードで上位をはしるはずだが、レッドブルは本領はっきまでに数戦かかる。その数戦の区切りが、毎年、最初の一区切りとなるスペインGP。今年の第5戦となるスペインGPは、例年“本当の開幕戦”とも呼ばれる。そろそろマシンの足並みがそろうレースになるからだ。
スペインがそういわれるもうひとつの理由は、アウェイの海外遠征から、多くのチームの本拠地があるヨーロッパのレースになることもある。ヨーロッパ・ラウンドになると、トランスポーターでマシンやパーツを運搬でき、各チームは地に足がついた動きができるようになる。
トロロッソは、開幕戦からポテンシャルを出し切れているが、オーソドックスな作りのために、他が伸びてくると相対的に後退する。表に現すと、以下のような流れになり、レッドブルとポジションが入れ代わり始め、その後、数戦でレッドブルはさらに調子を上げ、シーズン終盤まで突っ走るが、一方、追い越されたトロロッソはシーズン後半に向けてチームの規模から息切れ気味になり、シーズン終盤に戦力がわずかに下がる。厳しい見方をするなら、日本GPの鈴鹿では、Q3入りが難しくなっているかもしれない。
シーズンがどう動くのか、トロロッソとレッドブルに注目してシーズンを追うのも悪くないかも。
[STINGER]山口正己
photo by TOROROSSO / REDBULL