F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集 F1 STINGER 【スティンガー】 > F1ニュース >   【緊急特集】F1から見る未来像①–桜井淑敏さんに聞くホンダのテレメータリング1/3

F1ニュース F1の動向が一目でわかる新着ニュースや最新トピックを随時更新。

【緊急特集】F1から見る未来像①–桜井淑敏さんに聞くホンダのテレメータリング1/3

2020年4月。コロナ・ウィルスが世界的な驚異となって勢力を拡大しつつ蔓延しているが、F1のテクノロジーという表層の部分ではなく、もっと深い部分でF1GPという世界を観すると、そこに窮地を救う叡知が潜んでいるかもしれない。

30年以上も前に、部品点数2万点以上の複雑なエンジンの状況を、ヨーロッパのF1GPの現場と日本のホンダの研究所との間の“テレメータリング”でつないで監視/運営した第二期F1時代のホンダ。エンジンを人体に置き換えると、1980年代に先進的な思考回路でF1GPを闘ったホンダのノウハウが活かせるかもしれない。

◆ホンダ第二期時代のチャレンジ
1980年代中盤から1990年にかけて、ターボエンジン全盛時代にホンダはF1GPのチャンピオンエンジンを送り込んで王座に君臨した。その最初の成果となった1986年、ネルソン・ピケのワールドチャンピオンと、ウィリアムズのコンストラクターチャンピオンを支えたホンダ・エンジンの“テレメータリング”によるマネージメントを、総監督として部隊を牽引した桜井淑敏総監督に訊いた。


のっけから興味深かったのは、ホンダ・マンとして、本田宗一郎の意志を継承した桜井淑敏総監督の基本理念だった。

ホンダは、世界一を目指して、1983年にF1GPに復帰したが、最初は、スピリットというF2マシンの改造型の車体を使ったこともあって苦戦を強いられたが、1987年には、ネルソン・ピケとウィリアムズFW11Bで、ドライバーのワールドチャンピオンと、コンストラクターズタイトルを独占した。

その裏に、日本の和光研究所とイギリスのウィリアムズをつなぐ『テレメータリング』の構築秘話があった。

◆真実の把握
F1GPの現場と、ホンダの研究所の和光をとりまとめ、自らを総監督といった桜井淑敏が最初に目指したのは、なんだったのか。

「まずは真実を見極める。これが最初の段階で重要なので、そこを考えました」。

F1は、1980年代序盤まで、高度な闘いだったものの、データの整理はもっぱら経験に頼る曖昧なもので、決して進んだ世界ではなかった。特に、エンジンに関して、燃費を始め、各部の温度などの把握が出来ていず、今からは信じられないが、“かこにこうだったから、きっとこうだう”という、よく言えば職人技といえるけれど、予測の範囲を出ない範疇で進められていたのだ。

「経験による想像の世界で運営されていたのです。経験のある人は、なかなかそこを曲げられない状況でした」。

1983年に現場を視察し、1984年からF1の責任者になった桜井淑敏が最初に行なったのは『真実を知ること』だった。走行中のエンジンの状況をセンシングし、エンジンの状況を知ることに注力した。

「マシンに搭載したコンピュータにデータを集積し、ピット前のストレートを通過するときに無線でピットにデータを送信したのです。20~30種類のデータをピットに飛ばしただけだったけれど、これでもかなりの効果が期待できました」。

その結果を現地でとりまとめたものを和光研究所に届けた。だが、この段階では、まだ、目指していたリアルタイムではなかった。

「現場でまとめたものを、衛星を使って和光に送っていましたが、どうしても20秒~30秒のズレがでてしまう」。

そこで桜井は、第二段階として、『沸騰型システム』を考案する。ヨーロッパの現場と、日本の和光研究所で、リアルタイムに情報を共有することにした。沸騰システムとは、水が洲沸騰すると、ボコボコと煮立ってしぶきがほとばしる、その状態だ。

「現場の技術レポートも重要だけれど、それ以前は、ドライバーと現場のエンジニアのコメントだけで判断されていたものを、第二段階として、イギリスに出張していた20人~25人のエンジニアがリアルタイムで検討できるするようになり、さらに、衛星を使って日本の和光に飛ばすことで、一気に研究所で構える100人以上のエンジニアが同時に検討できるようになりました」。

2/3につづく)

[STINGER]山口正己
photo by Honda

記事が役に立ったなと思ったらシェアを!

F1 最新レースデータ

F1 ポイント・ランキング

F1ドライバーズ・ポイント
1位マックス・フェルスタッペン491ポイント"
2位セルジオ・ペレス240ポイント
3位ルイス・ハミルトン220ポイント
F1 コンストラクターズ・ポイント
1位レッドブル・レーシング860ポイント
2位メルセデス409ポイント
3位フェラーリ406ポイント

PARTNER
[協賛・協力企業]

  • CLOVER