無観客のシルバーストンの隠れた問題
F1GPは、開幕からあっという間に3連戦を消化し、1週間のインターバルを挟んで、シルバーストンの2連戦に突入する。
各チームがインターバルの間にどんな準備をしてくるのかは、フタを開けてのお楽しみとして、シルバーストンとこれまでが大きく違うところがある。それは、3戦に比較して高速コースということだ。
同じ高速コースでも、ストレートをシケインでつないでいるタイプのモンツァとはまったく違う。モンツァは、“平均速度が高い低速コース”という小林可夢偉の名文句があるが、ストレートが長く、平均速度は高いけれど、コーナーは、レズモやパラボリカを除くとほとんどがシケインで構成され、コーナーじたいは高速ではない。しかしシルバーストンは、ベケッツ、マゴッツなどの高速S字や、コプス、ストウ、アベイなどの高速コーナーが特徴となっている。
1991年にコースが大幅に変更され、以前ほど顕著ではなくなったとはいえ、高速コーナーが特徴であることに変わりはない。
そして、飛行場跡地という立地条件も、シルバーストンならでは。吹きっさらしの中で走ると、高速なだけに、風が走りに大きく影響する。
ところで、今年のレースは、無観客で行なわれることがレースを左右するかもしれない。
観客がいないと、ファンが作った応援旗がないことになるが、実は応援旗には、重要な役割がある。風向きが刻々と変化するシルバーストンでは、次のコーナーが追い風か向かい風かでダウンフォースが違ってくる。旗を観ることで風向きを知ることがちょっとしたノウハウだったのだが、観客がいないとコーナーで指針としていた旗がなくなる。高速なだけに、風向きは無視できない。
こんなところも、拮抗した戦いを加速する要素としてレースを面白くしてくれそうだ。
[STINGER]山口正己
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