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“新しい”フォーミュラE

GEN2(ジェネレーションその2/第二世代)のフォーミュラE。

フォーミュラEの二代目マシンが、3月6日のジュネーブ・ショーでの正式発表を前に姿を見せた。

GP2マシンがベースの、いかにも急造りなイメージの初代に比べると、二代目ははるかに洗練されたスタイリングになった。フォーミュラEが、化石燃料を爆発させるのではなく、モーター駆動である、というその基本概念だけでなく、新しい感覚のカテゴリーになることが感じられるシェイプだ。

ただし、“新しさ”の中に、モーターレーシングの根本が覆されるかもしれない要素も隠れている。それは、4輪ともタイヤがカバーされているということだ。

そもそも、フォーミュラとは、“規格”を意味していて、いわば“カテゴリー”という意味だが、これまでのフォーミュラカーは、『シングルシーターでタイヤが車体から飛び出した形』だった。だが、次世代フォーミュラEは、シングルシーターだけれど、タイヤがカバーされている。ここが肝心。

確かに、安全の見地からも空力的にも、タイヤカバーがあった方がいい。タイヤを覆うカウルがあれば、タイヤ同士の接触を防ぐことができ、むき出しのタイヤのばかでかい空気抵抗も減らすことができる。

しかし、そもそもなぜフォーミュラカーのタイヤがむき出しなのかを考えると、新制フォーミュラEは、その理念から外れてしまう。タイヤがむき出しなのは、ドライバーのスキルを試すためだからだ。

モーターレーシングには、『他車と触れない』という絶対的な約束がある。簡単に言えば、サッカーはボールに手を触れてはいけない、というのと同じだ。しかし、往々にして接触は起こる。そのぶつかり合いが面白いという意見もあるが、基本はぶつけるのは御法度。理由は、いうまでもなく危ないから。タイヤがカバーされていると、ついついぶつかる事態も起きるが、タイヤがむき出しのフォーミュラカーは、ぶつかるとタイヤ同士がはじき合って極めて危険な事態になる。問題はここだ。

だからカバーする、という方法もあるが、あえてカバーせず、それを操るドライバーのコントロールでぶつからないようにする、という考え方もある。

本来のモーターレーシングは、自動車の競争であると同時に、ドライバーの競争という側面を持っている。そもそも自動車は、パワードスーツのように人を高速で移動させる人のための道具として誕生した。移動するのは人であり、車そのものではない。そこから思考をスタートさせると、そのくるまを使って競うモーターレーシングは、ロボットが運転するのではなく人がコクピットに乗っている限り、ドライバーの能力が、蛮勇だけでは満点にならないという評価基準があって欲しいと思う。

しかし、問題は、アクシデントが起きてしまったときの考え方だ。アクシデントを起こさないくるまにするのか、ドライバーに委ねるのか。ここが意見の別れるところだ。

正確なデータがあるわけではないけれど、インディカーがリヤタイヤをカバーして以来、接触事故が増えている気がする。それは、ドライバーに安心感ができた結果ではないかと思える。フォーミュラEがそうならないことを祈るばかり。

モーターレーシングは、プロレスのようなショーアップも必要だけれど、テクノロジーの闘いとして存在すると同時に、高度な人間の闘いとして存在してほしいと思う。

新制フォーミュラEマシンは、形だけでなく、モーターレーシングのあり方も新しくするエネルギーを感じる。それがいいことなのかどうか、いまのところまだわからない。

[STINGER]山口正己
photo by FormulaE

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