開幕戦を占う—その1 プレシーズン・テストから見えた!!
ウィリアムズが速い!?
プレシーズン・テストは、今年に入って3回行なわれている。2月7日から10日のヘレス、2月21日から24日と3月1日から4日のバルセロナである。いずれも温暖な南ヨーロッパのサーキットを舞台にしている。
“テストのタイムはアテにならない”というのがF1の常識だ。それは、ふたつの理由がある。
ひとつは、テストがタイムアタックの場ではない、ということ。それぞれのチームが思い思いのプログラムをこなす。タイヤの種類は、外から見えるから判断できるが、燃料の搭載量や、それこそ規定重量をカバーするバラストの量など、極秘裏で行なわれるから、他チームからは分からない。
テスト会場で、ガレージの前に衝立が置かれて中が覗けないようにしているのは、単に新アイデアの秘密のパーツを見せたくないだけでなく、燃料搭載量などや、作業内容を確認されたくないからだ。
なぜそうするのかといえば、それはポテンシャルを悟られたくないから。相手の力量を見切ることが開発段階ではかなり重要になる。ターゲットを見定められれば、開発の指針を決められるが、相手の力が読めないと、どれくらいのポテンシャルでシーズンを迎えるべきか、迷いながらの作業になる。強いチームが強いのは、潤沢な予算でマシンの開発がうまく進められる、という以前に、そうした足元の確実さもあったりする。
タイムがアテにならないもうひとつの理由は、仮に一番柔らかいタイヤを装着し、燃料をギリギリに減らして軽い状態で走っていたとしても、本当の力では走らない。全開の一歩手前で走り、タイムとして現れないようにすることもある。
こうして、テストのタイムは比較しても意味がない、という結論になるのだが、、すべてのチームがそうでもなかったりする。例えば、ウィリアムズである。
特に資金調達が必至で、スポンサーの気を引きたいチームは、”結果データ”をプロモーションに使える。スポンサーのすべてが、そうした状況を認識しているとは限らないたからだ。好タイムをマークしておけば、スポンサーを口説けるかもしれない。ウィリアムズは、バルセロナ1回目の2日目に最速、3日目が2番手、バルセロナ2回目の最終日にも3番手のタイムを記録している。
極端な話、テストでは車検があるわけでもないので、バラストを外して最低重量以下で走ってもお咎めはない。下位チームが好タイムを記録した場合、そのタイムの信憑性は、実は高くないこともある。
しかし、そうすることでメリットもある。そのタイムを見たライバルが、不安になればしめたもの。気になるのは、ウィリアムズの周回数がメルセデスに次いで多く、つまりはトラブルが出ていないことだ。もしかすると案外悪くないのかもしれない。
いずれにしても、狸と狐の化かし合いの様相でテストは進められた。そこを頭に入れて、テストのタイムを比較すると、開幕戦が楽しくなる要素がチラホラ見えるかもしれない。
全チームのプレシーズン・テスト走行データはこちら。
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