『100周』の根拠
バルセロナでのF1合同テスト3日目は、朝から雨模様。そのため、テスト2日目に100ラップ以上をこなせたチームは、満足できないまでも、心配事は少なくて済んだという状況がある。
◆100周の区切り
ここで、『100周』がなぜ区切りになるのか根拠を挙げておこう。
計測10ラップの各タイヤのロングランを3本から4本、さらにレース・ディスタンスの66ラップ、これがテスト期間中盤のミニマム・メニューだ。
しかも、ラップタイムが、去年までの”ブリヂストン時代”より落ちているので、12時から13時の間に1時間の昼休みのあるカタルニア・サーキットで、この100ラップをこなすのは、簡単ではない。
その中で実際、テスト2日目で、このメニューに近い状況だったのは、昨年のチャンピオンのフェッテル+レッドブル、アロンソ+フェラーリ、そしてロズベルグ+メルセデスだけで、他のドライバーは、ロングラン10計測ラップを、数度に渡り繰り返すという状況だった。
そのロングランですら、なんらかのトラブルで終了できないチームも存在する。S.フェッテルも、レース・シミュレーション中に緊急ピットイン、トラブル修復というハプニングが起きている。フェラーリも同様の状況に見舞われた。
しかし、この2チームのトラブルは、単純なシステムエラー、もしくは熱害によるパーツ焼損と見られているが、いずれも短期間の作業でコースに復帰しているので、まずまずと、いったところだろう。
◆セカンドチームの勢力図
一方、メルセデスは、周回目標こそ達成しているが、肝心のラップタイムがフェラーリとレッドブルに大きく遅れている。そのイライラを示すように、メルセデスのガレージ裏の雰囲気は必要以上にピリピリしており、セキュリティの問題と称して、観客や他チームの関係者をトコトン排除する光景も見られた。
また、メルセデスとシューマッハに対する、ドイツ・メディアの愛と憎しみの攻撃(?)は相変わらず続いており、この状況を打開するには、まさに表彰台以上の成績以外にはない。ルノーからヘッド・ハントしてきた新テクニカル・ダイレクターのボブ・ベルが、この火消し役になれるかどうか。
こうした状況で、3日目の雨。仮に午後に向けて天候が回復したとしても、路面がフルドライになるまでには、かなりの時間がかかる。また、4日目が晴天に恵まれたとしても、2日目と同様、午前中は気温が上がらず、少なくとも午前11時過ぎまで、テストにならない。
まして、ピレリタイヤの「保ち」は昨年のブリヂストンに比べて、セッティングの最適化が進んでいないことが足を引っ張って良くはない。ピレリによると2回のピットストップを実現するための措置というので、この保ちの問題は「敢えて」ということと理解するにしても、チームとしては、必要なタイヤセット数が多くなる。満足にテストを進めていないチームからすると、開幕まで、圧倒的に、時間も、機会もタイヤセット数も足らないということである。
そこへ来て、バーレーンの政情不安による最終合同テストと開幕戦中止の不安が残っている。おそらく、多くのチームの現場は、現状のテスト不足を踏まえ、バーレーンテストの代替地を探すことを望むだろう。しかし、それは移動コストの問題も絡むため、現場の意見だけでは決まらない。チームのトップが現場の意見とコストの関係を見極めて決断する事になる。もちろん、現場とコストのバランスと背景は、チームによって異なる。簡単に決着することではない。そのため、FOMのバーニー・エクレストンとFIAのジャン・トッドに、テストと開幕戦の開催含む決断を委ねようという状況だ。
こうした状況からして、開幕予想は、レッドブルとフェラーリの4台が表彰台を争い、速さはありそうだが信頼性に疑問が残るマクラーレンと、速さはレッドブルほどではないが信頼性はあるメルセデスが、その次点を争い、さらに速さは、まだ見せていないモノの、ラップタイムとタイヤの摩耗肌から類推して、タイヤの活かせ方が良好に見える黒ロータスのハイドフェルドとサウバーの小林可夢偉が割って入るという図式が見える。たたし、それぞれのチームメイトには、残念ながら、現状でこのタイヤは難しそうだ。
この争いに、当然トロ・ロッソとフォース・インディア、ウィリアムズのバリチェロが絡んでくるだろう。散発的な一発タイムが、その片鱗を感じさせている。
新興3チームは、おそらく緑ロータスが、トロ・ロッソ、フォース・インディア、ザウバーのいずれかを食って、実力でのQ3入りがあるかどうか、という状況も見え隠れしている。
バルセロナのドライで24秒台に入れて、既存チームに割って入るかに見せているが、実際は、既存チームに対して6秒ほどあったラップタイムの差が、それほどの差はないところに、一見、進化の跡が見える。
とはいえ、新興チームは、参戦2年目。その経験とノウハウで参戦10年以上のチームに追いつこうということであり、そのコミットメントには敬意を表せねばならないだろう。