マクラーレン・ホンダの後半戦–その1・期待できるコース
栃木県のサクラ研究所。ホンダのモーターレーシングのすべての開発がここで行なわれている。
次の週末、ほぼ1カ月にわたる夏休みが解けて、後半戦が始まる。難攻不落のスパ-フランコルシャンでのベルギーGPがその舞台だ。
スパ-フランコルシャンは、きつい上りとそこに続く長いストレートがあることから、エンジンのポテンシャルがタイムに大きく影響する。
マクラーレン・ホンダのシリーズ前半の成績をみると、最も好調だった第11戦ハンガリーGPがチーム力を表す格好の指針となった。フェルナンド・アロンソは、金曜日のフリー走行1以降、予選/決勝までの5セクションのすべてで、7位を記録した。
ホンダF1レーシングの2016年は、Q3進出を目標にしてスタート。第5戦スペインGPでそれを達成すると、その後も進化を続けて、Q3の常連から、常に入賞圏内を視野に入れられるポジションを確保した。
ハンガリーで記録した7位というのは、メルセデス、レッドブル、フェラーリのトップ3に続く成績だ。それぞれの2台=6台の直後にアロンソ+マクラーレン・ホンダがいた。
ホンダF1レーシングの長谷川祐介F1プロジェクト総責任は、ハンガリーGPの会場が「我々に合っていたと思います」と自己診断した。ハンガリーGPの舞台となったオンガロリンクは、メインストレートと3コーナー先の上り区間を除けば、比較的パワー依存が少ないコースレイアウトで、さらに、今年は路面が新たに補修され、滑らかだったこともマクラーレン・ホンダに味方した。
その証拠に、全開率が高くなってパワーユニットのポテンシャルに左右される上に、バンピーな路面のホッケンハイムで、”7位”のポジションを守ることができず、アロンソもバトンもQ3に進めなかったが、平均速度が比較的低いコースで条件がそろえば、マクラーレン・ホンダは、トップ3に次ぐセカンドグループの先頭争いができるところにきた、ということになる。
高速コースではまだ苦しい闘いを強いられている。パワーで押し切る必要がある高速コースとして、後半戦に残っているのは、速い方から、イタリアGPのモンツァ、ベルギーGPのスパ、そして日本GPの鈴鹿が、それぞれ、240km/h以上、230km/h以上、220km/h以上とマクラーレン・ホンダには厳しいレイアウトだ。
しかし、その反対に比較的低速で、路面が荒れていないという条件をシーズン後半に照らしてみると、平均速度が200km/h以下の比較的”低速”コースは、シンガポールGP、メキシコGP、アブダビGPの3戦になる。アメリカも200km/hをやや超えた辺りなので、ここに入れてもいいだろう。
シンガポールは、「咳き込んでしまう振動」(中嶋一貴)というくらいの凸凹路面だから辛いかもしれない。しかし、ホンダのパワーユニットが壊れなくなった今年、マクラーレンもジワリとシャシーポテンシャルを上げて来ているので、バンプ対策ができれば期待してもいいかもしれない。
そして、長谷川F1プロジェクト総責任は、「エンジンパワーは、メルセデス、フェラーリ、ルノー、ホンダの順」としながら、「高速だからって、全然ダメと思っているわけではありません」とも言っている。
実は、夏休み突入前の段階で、ホンダは”次のタマ”を準備中で、その確認が済めば、「スパ-フランコルシャンからでも入れたい」(長谷川F1プロジェクト総責任)という。
まだまだ表彰台争いというわけには行かないけれど、スパ-フランコルシャンから始まる後半戦のマクラーレン・ホンダは、「Q3の常連」、「トップ3に続く位置」に続く2016シーズンのスリーステップ目に進化する準備ができた、ということが言えそうだ。
[STINGER]山口正己