シーズン歓待特別企画 【浜島裕英、「2010年」を語る】 1/9
3月14日のバーレーンGPまで1カ月。話題山盛りの新シーズンを余すことなく楽しむための[STINGER]特別企画。ブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発総括責任者に訊く、”タイヤからみた2010年の見どころ!”。
◆2010年のタイヤ・レギュレーション
—-まず、今年はどんなタイヤのレギュレーションなのかをお伺いします。
浜島裕英 ブリヂストンMS・MCタイヤ開発本部長(以下、浜島) フロントのタイヤが少し小さくなりますが、タイヤ自体のレギュレーションは変わってないです。
違うといえば、「パージング」(注1)といって、タイヤのなかの空気を乾燥させるものを使ってはいけない。それから、リム・ヒーターを使っちゃいけない。これがタイヤに対する扱いの(2009年までと)一番違うところじゃないでしょうか。
—-タイヤの種類は、これまでと同じように二つ?
浜島 そうです。……で、タイヤ交換はマスト(必須)。あと、まだ細かいところはいろいろ考えられていて、たとえばFIAは、予選で使ったタイヤでそのままスタートさせようと考えてるみたいですけど。ただ、現状は去年と変わってないです。(注2)
—-予選のときは、もちろん燃料タンクはカラカラ?
浜島 そうですね、カラカラにして走るでしょうね。
—-その後に満タンにして、レース中は無給油になる?
浜島 はい。
◆スタート時、クルマは去年より100㎏重くなる!
—-そうなると、2010年、クルマがやたら重くなりませんか?
浜島 スタートで? ええ、今年より約100キロ重くなります。ただ、マスとして100キロ重くなって、ドライバーにとってはコーナリングしにくくなるでしょうけど、タイヤに対しての「入力」はどうかということを考えると、耐久力ということでは問題ないです。
もともと、(F1マシンは)ダウンフォース自体がトータル2トンくらいあるやつですからね。(これまでタイヤはそれに耐えてきているので)だから、100キロくらい(車重が)増えても誤差のうちに近い。
—-車重が600キロちょっとのクルマが、走ると(ダウンフォースで荷重が)2トンということ? これもすごい話ですが、では”タイヤづくり”という面では従来と変わらない
浜島 そこの部分では変わらないんですけど。ただ、今年はスティントが長くなる可能性がありますよね? スタートして、給油しに(ピットに)入ってこないから、できるだけ長く走った方が(レース運びとして)トクになるので。
仮に先頭の人(ドライバー)が(走行タイムが)遅くて、レーシング・スクールみたいに後ろを引き連れて走っても、みんながピットに入り終わってから、タイヤ交換すると有利ですよね。それを狙うと、スティントが長くなる可能性があるんで、その分の耐久力は上げるように、コンストラクション(構造)を多少いじりました。
—-なるほど、昨年までとは違うレースの新局面ですね。
注1:「パージング」:タイヤ内部のエア(空気)が乾燥していると、温度変化に内圧が影響を受けにくくなり、タイヤが安定して所定の性能が出しやすくなる。
注2:FIA(国際自動車連盟)は2月2日にプレスリリースを発表し、2日のF1委員会でスポーティング、テクニカル面のレギュレーションを改正することに合意したことを通達した。
タイヤルールも変更され、予選でQ3に進んだドライバーはQ3で使用したタイヤセットで決勝をスタートすることになった。また、「1チームに割り当てられるドライタイヤのセットは、これまでの14から11に減らされる。また、金曜日のフリー走行で走る機会を増やすため、フリー走行2の前に1セット、フリー走行3の前には2セット返却しなくてはならない」とした。