ホットライン2010 round11 ドイツGP 1/3
折返点を過ぎ、F1GPはヨーロッパ大陸に戻った。ホッケンハイムのドイツGPは、いろいろな側面から面白いレースだった。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長が、ドイツGPの裏舞台をズバリ診断する。
◆森を抜けるセクションがなくなったホッケンハイム
羽端恭一(以下、羽端) もしもし、いま、どこですか?
STINGER編集長山口正己(以下、[STG]) まだ、ホッケンハイムからクルマで20分ほどのシュパイヤーという街のホテルです。
羽端: 日本には戻らずの、まだドイツ語圏で。ということは、そのままハンガリーへ?
[STG]一端スイスの友人宅にお邪魔して、水曜日にブダペストに移動します。
羽端: 可夢偉も、水曜日にはハンガロリンクに入ってると言ってたような?
[STG]たいていは、水曜日に”現地の人”になり、地に足を付けておいて、木曜日から活動開始するのが関係者のパターンと思います。ただし、ヨーロッパは時差がないからそうなりますけど、ドライバーの場合、時差対策が必要なときは、日曜日には現地入りしているようですね。
羽端: けっこう体力的にも大変なような気がしますが、でも、”F1放浪”みたいで、なんかいい感じ!(笑)
[STG]二つの立場が混在してますね。個人的に旅行しているならこんな贅沢なことはない。しかし、プレスルームを出るのがレストランが閉まっちゃう時間で、結果として空港→ホテル→サーキットをヘロヘロになりながら行ったり来たりしているだけってのもなぁ、みたいな(笑)。
羽端: ところでホッケンハイムですけど、もっと森の中を走るようなイメージがあったんだけど、中継見てると、森の気配はなかった?
[STG]2002年から森の中を通過する長いストレート部分がなくなって新コースになったので。
羽端: あ、そんな前から、コースは変わってたんだ。失礼しました。私の記憶のなかにあるホッケンハイムは、その森や木が”スピーカーのハコ”みたいな作用をして、エキゾースト・ノートがキレイに響く。そんな”コンサート会場”みたいなところだなというやつなんです。
[STG]それはむしろ、イタリアのイモラじゃないかな。スタンドが音響効果を考えて作られているというのを訊いたことかあるので。もうひとつ、昔のF1は、V12があったり、音からしてもっと甲高かったかも。
羽端: ふーん、イモラは、じゃあ、もっとすごいんだ。私は、イモラは未体験ゾーンなので。
[STG]トランペット奏者の近藤等則さんは、「フェラーリが鳴いている」と言いましたからね。聞いてて痺れました(笑)。聴覚が鋭いミュージシャンの言葉ですから。ホッケンハイムも、以前は長いストレートを”カーン”という高回転を響かせて走るということは、それだけスピードが高くなってリスクも比例して大きくなっていた。
羽端: なるほど、やっぱり「危ない」というコースは”存続”がむずかしいんでしょうね。ディディエ・ピローニが、雨のホッケンハイムで追突して”飛んだ”とき、マシンと一緒に自分が木の上くらいの高さまで上がったと語っていて・・・。
[STG]フェラーリのライバルだったジル・ヴィルヌーブが亡くなった直後だったこともあって、ショッキングでした。ピローニは、意識がしっかりしていたけれど、両足複雑骨折で傷みに襲われた血だらけの顔は今でも忘れられません。
羽端: ディディエは、このときは下半身の大ケガだけで済んだけど、何年かあとに、パワーボートでクラッシュした。F1では死ななかったのに・・・。
[STG]そうなんですね。でも亡くなる直前にモナコで見かけたときは、運動不足でかなりぷっくりしてました。
羽端: 最近読んだ本で、ホッケンハイムでのことについて、ピローニがいろいろ語っていて・・・。
[STG]例の『セナ vs プロスト』ですね。帰ったら本屋さんに行ってみます(笑)。
ホットライン2010 round11 ドイツGP 2/3に続く。