ホットライン2010 round11 ドイツGP 2/3
◆可夢偉、したたかに、着実に、レースする!
羽端: ザウバー/可夢偉は、今回は”めざましい”とはいえなかったけど?
[STG]内容的には素晴らしくいい仕事をしていたと思います。
羽端: クルマやチームの実力通り、という気もしますよね?
[STG]というか、ウィリアムズの前でゴールしたのは立派。マシン・ポテンシャルは確実にウィリアムズが上でしたから。
羽端: それに、その「実力」って、その通りに発揮するだけでも、けっこう大変なことだと思ってるから・・・。
[STG]ですね。往々にして結果表から物事を判断したくなるけれど、実は内容が大切ですから。
羽端: レース後の”直撃”で、可夢偉が、今回はメルセデスやウイリアムズと「レースができた」というようなコメントをしているのが興味深かったです。
[STG]彼は冷静に自分のポジションがどこにあるか見切っていると思います。もちろん、ルノーのペトロフにやられたのは悔しかったはずだけど。それはそれ、みたいな解釈もできている。
羽端: なるほど。私が可夢偉の発言から思ったのは、まずトップ3があって、それにつづいてルノーがいて、これで「三強プラスワン」という格好で4チーム/8台がある。それにつづく「中団」の、そのなかでの上位に、ザウバー、メルセデス、ウイリアムズがいる。当事者・可夢偉の現場感覚だと、こういうランク付けになっているんだろうなあ、と。
[STG]その通りだと思います。実はホッケンハイムで可夢偉に、”最近、「可夢偉語」が理解できるようになった”といったら「気味が悪いですね」と笑っていました。この言い方も、裏には、”いろいろ考えていることを分かってくれてありがとう”みたいなメッセージが入っているんじゃないかな、と。
羽端: フフフ、らしい、ですね!(笑) 「可夢偉語」といえば、一度聞いてみたいのが、走りについて、彼が「まとまる」とか「まとめる」という表現を使うこと。今回は「まとめられなかった」とかね。これって、レーシング・ドライビングって、あるコーナーだけの勝負じゃないんだとか、クルマやタイヤとの”相談”も含めて、高度に妥協しつつのドライビングなんだとか、そんな意味が秘められているような気がするんですけどね。・・・で、そうやって「まとめて」、三強プラスワンのすぐ後ろにつけているのが、昨今の可夢偉で。
[STG]で、そうして現在のポジションを護り続けると、前回のイギリスのように、上位のどこかが崩れると上位のチャンスが出る。
羽端: そうですね、そのチャンスを活かすためには、ちゃんと「そこ」に居続けていないといけませんからね。これがすごいと思う。そして、チームメイトにもヒケを取ってないし。
[STG]ですね。ただし、今回は、メルセデスに弄ばれたというか翻弄されたみたいです。
羽端: というと?
[STG]メルセデスとしては、前のルノーには追いつけないので、可夢偉からポジションを死守する作戦に出たのではないか、と。
羽端: おお、後ろを見ての(笑)レースをしたんだ、シュー先生は。
[STG]と、R.ブロウンですね。M.シューマッハの動きを良く見ていると、周回遅れの処理を、追いついてすぐにやっていない。自分の後に抜く可夢偉が、一番抜くのに手間取るところを選んで、そこから逆算して周回遅れをパスしたのではないか、という風にも見えました。
羽端: フムフム、そういう場所で、周回遅れをパスすると?
[STG]可夢偉は、スパッと抜ける場所ではないから、周回遅れにひっかかって、結果として、たとえばタイヤを冷やしてしまう。
羽端: なるほど。そこでメルセデスは”時間稼ぎ”ができる。
[STG]これはあくまで想像ですけど、M.シューマッハとR.ブロウンならやりかねない。しかし、それだけマークされる存在になった、ということだと思います。