ホットライン2010 round12 ハンガリーGP (PART-2)
◆どうした、フェッテル?
羽端: 可夢偉の話ばかりでは、アレなので・・・(笑)。
スティンガー編集長山口正己(以下、[STG]) いやいや、私もちょっと興奮しすぎました(笑)。
羽端: ところで、レッドブルの二人ですが。
[STG]セバスチャン・フェッテル君が、ちょっとイメージを落としましたね。
羽端: というと?
[STG]今回、ライブレポートでも、”タイヤの使い方がうまいF.アロンソと、速いマシンを持っているS.フェッテル。どちらに軍配があがるのだろうか”と書きましたが、フェッテルはアロンソに完全に翻弄されてしまった。
羽端: そうですね、レースでアロンソを追っかけてはいたけど、抜けそうな気配は、あまりなかった。彼の場合、まだ、持っている「引き出しが少ない」のでは?
[STG]「打たれ弱い」と言った方がいいかもしれないですね。F1に上るまで、スムーズに行き過ぎていたことを指摘する意見もあります。彼が速いのは、速いクルマに乗っているからであって、腕ではない、と。
羽端: たしかに、今回も予選ではポール・ポジションは取っているけれど、スタートでミスしている。
[STG]そして、セーフティ・カーの時に慌ててラインカットして、入ってはいけないところからピットインした。
羽端: 無線もちゃんと機能してなかったようですけどね。あと、ドライブスルーのペナルティは、セーフティ・カーが入っているときに、10車身以上前と開けたからだということで。
[STG]無線が仮に壊れてたとしても、それならそれで、そういう場合のみの処し方というのはある。
羽端: フフ、あのピットへの”逃げ込み方”というのは、けっこう、みっともなかった(笑)。
[STG]・・・ですね。ああいうときの肝っ玉の座り方は、可夢偉の方がはるかに上です。
羽端: そういった「モロさ」も、やっぱり「引き出し」の数に比例するような?
[STG]だと思います。ただ、これは、鍛えて強くなるものではないので、これから後は、S.フェッテルは苦しくなると思いますよ。
羽端: なるほどね。でも、前にも言ったことがあるかと思いますが、「大森」からニッサンのエースに”成り上がって”、そして君臨した星野一義さんのように、裏街道にいたといってもいいマーク・ウェーバーが、レッドブルという素晴らしいウェポンを得て、2010年のチャンピオンになる・・・というストーリーは、なかなか、いいな!
[STG]ですよね。でも、まだわからないですね。レッドブルの内輪もめが激しくなると、チーム全体の士気にとってもいいことはないし。
羽端: フェッテルは、今年はまだ”修業中”の身であるということで、チャンピオンは、まだ”いい”のではないでしょうか?(笑)
[STG]そういうことかも。”まだまだ”、だったらいいんですけど。伸びるものと伸びないものがあるので。
◆シューマッハの行為に、バリチェロが怒った!
羽端: バリチェロが、シューマッハに「怒っている」ようですね。
[STG]あれだけ、えげつなく幅寄せされれば、怒るのも当然。バリチェロは、自分のキャリアの「300戦の中で一番危ない瞬間だった」と。相手がR.バリチェロじゃなかったら大変なことになっていたかも。
羽端: 可夢偉も、あれはペナルティだろう! と言ってた。
[STG]可夢偉は、セーフティ・カー明けでM.シューマッハを抜いているけれど、その時も”変な動きをした”と言ってます。「変な」というのは可夢偉独特の表現で、言いたいのは、”汚い”とか”セコイ”という意味と思います。可夢偉が凄いのは、「ああ、いつもの、と思った」ってところ。相手にしていない。
羽端: いつもの・・・ということは、シュー氏は、そういうパーソンとして、あのソサエティで認識されてるっていうことかな。この、ピットウォールに向けてライバルを「押しつける」というのは、シュー氏は”あのセナ”から”学んだ”のかも?
[STG]アイルトン・セナも強引でしたが、追い詰められた多くのドイツ人の行動とは、若干違う気がします。
羽端: これは例の本(『セナ vs プロスト』)に書いてあったんですけどね。マンセルとプロストが、そういう目に遭ったそうで。
[STG]形としては同じように、”何人も自分の前に出さない”ってことだと思います。
羽端: この本(『セナ vs プロスト』)は、ちょっと題名で損してるかもしれないです。二人についてというよりは、「セナの時代」というか、80年代初頭にアイルトンがイギリスで走りはじめたときから、90年代半ばの彼の死までに、F1世界で何が起こっていたか。このことが広く、そしてかなり細かく書かれている本なので。
[STG]チェックしなくちゃ(笑)。
羽端: それでね、この本で、シューマッハがどういう扱いになっているかというと、「誰に対しても尊敬を払わない男」がF1にやって来た、と(笑)。
[STG]仲間のカメラマンが、「思い出作りのために復帰なんかしてほしくなかった」と言ってました。他人をことは考えない(笑)。
羽端: ほほう! 思い出作りか!(笑)
[STG]写真を撮っていても全然覇気がない、と。それはそれとして、ドイツ人というか、ドイツのレースで育ったドライバーは、えげつないのが多いと言われます。
羽端: なるほど、ドイツのレース・シーンが、ドライバーに、ある種の乱暴さをもたらす。そういうのが平気になってしまう土壌がドイツにはある?
[STG]特にドイツ人ドライバーの場合、その傾向が強くなる、といわれています。中でもM.シューマッハがとくにエグイ、と。
羽端: でも、すべてのドイツ人ドライバーが”そうなる”わけでもないでしょ。やっぱり、シュー
マッハに特有の問題なのでは?
[STG]ある意味、追い詰められて冷静さを欠く、という意味では、S.フェッテルもそうだったし、ウィリアムズのN.フルケンべルグもかなりえげつない走りをするし、A.スーティルも強引ですね。これは底辺時代から、ドイツ人の速いドライバーの伝統というか。
羽端: バリチェロは、今回の件について、「ミハエルのことを知ってるだろうけど、彼と話をすれば、つねに自分が正しいように思っているんだ。彼は3年間やめていたけど、まったく変わってないのがわかるね。彼はいまだに同じ男なんだよ。《いまでは必要じゃないもの》を、過去から引きずっているんだ」とコメントしてますね。
[STG]レースの日にM.シューマッハは「自分は悪くない。戦うためにここにいるんだ」とコメントしていたけれど、月曜日に、自分のホームページで、「やりすぎだった」と謝罪しているようですね。しかし、次に同じ場面があっても、たぶん同じことをすると思います。そうじゃなくちゃ、M.シューマッハでゃなくなる、みたいな(笑)。個人的には、エグサをほどほどにして、M.シューマッハには活躍してほしいですけどど。
羽端: 「いまでは必要じゃないもの」というフレーズがココロに沁みます。
[STG]いまというか、いつでも必要じゃないですね。R.バリチェロはフェラーリ時代に、ナンバー2として長い間、M.シューマッハの下で我慢していたから、よく分かるのかも。しかし、お人好しで”お先にどうぞ”じゃレーサーは勤まらない。星野一義さんいから、「引退するときに、”あいつはいい奴だったけど遅かった、と言われるのと、あいつは速かったけどイヤな奴だった”と言われるのと、どっちがいいと思う?」と訊かれたのを思い出しました。
羽端: でも、星野さんって、決して”いいヤツ”じゃなかったかもしれないけど(笑)、しかし、あるレース屋さんが「あの人のことを悪くいう人は、レース界にはいない」と語ってました。
[STG]もしかすると”いえない”のかも(笑)。しかし、普段の星野さんは、気遣いするいい人ですけどね。我々が戦いに無関係だからかもしれないけど(笑)。
羽端: 闘いにおける「マナーとルール」というのは、レースだからこそ、闘うスピリットとともに、存在するのではないかと思います。
[STG]ともあれ、レーサーは、ギリギリのところでそれを見せてほしいですね。