ホットライン2010 round16 日本GP 2/2
羽端: さて、可夢偉がどうしてヘアピンで抜けたか!!
[STG] カントが関係します。コーナーの傾きですね。
羽端: ほう!
[STG] ヘアピンの前にはデグナーカーブがある。
羽端: はい・・・?
[STG] でも、その間に緩い右コーナーがあるわけです。
羽端: フムフム。
[STG] 緩く右に曲がった後に、左にきつく曲がり込むヘアピンがあるわけです。コーナーにはカントといって、カーブの内側が低く、外側が高い傾きが付けられています。通常の道路もそうですが、サーキットは特にそれが顕著。
羽端: カーブの内側が下がっていた方が曲がりやすい。
[STG] ですね。で、手前の右→ヘアピンの左、とつなげると、その端境の部分が、カマボコ状に盛り上がることになる。つまり、ヘアピン手前には、盛り上がった部分があるわけです。
羽端: ふーん、場合によってはジャンプもする状況?
[STG] です。マシンは不安定な状況になって、その瞬間が、ヘアピンへのブレーキング開始地点になるわけです。
羽端: あ、L.ハミルトン、そういえば、けっこうヘアピンで手こずっていたような?
[STG] 彼が時々ヘアピンで左フロントタイヤをロックさせていたでしょ。ヘアピンで、通常の「アウト-イン-アウト」のラインを通ると、アプローチ区間で左フロントが浮く形になる。さらに、ヘアピンコーナーのカントは、内側が強くて外側が弱い。つまり、コーナーの左半分だけカントが付いているんだそうです。
羽端: M.シューマッハがインに付かないで大回りしていたのは、それに関係あり?
[STG] どうもそうらしい(笑) さすが、M.シューマッハですね。鈴鹿のコースの特性を見抜いている。
羽端: 可夢偉は、たしか、鈴鹿の経験はそんなになかったんじゃ?
[STG] 7年ぶりですから、鈴鹿を走るのは。でも、頭じゃなくて、勘と閃きでそういうところを見切った、と私は思います。抜くにはどうするか、を本能的にはじき出した。
羽端: 鈴鹿の新しいパッシング・ポイントを「創造」したというのがすごいと思う! その意味で、今回の可夢偉は伝説をつくったのでは?
[STG] それは、ちと言い過ぎかな。すでに、2008Fポン・チャンピオンの松田次生選手はそのことを知っていましたから。彼は、”ホントはいいたくないけど”と笑ってたし。となりにいた吉本大樹選手も、ウンウン、と頷いていたので、たぶん鈴鹿を走り込んでいるトップ連中は、みなさんご存じ(笑)
羽端: なるほど〜〜。そういえば”悲しい話”をひとつすると、地上波の放送で、可夢偉がヘアピンで、おそらくわざと威嚇的に、俺は抜く意志があるぞ! ということも含めて、ヘアピンの入り口、突っ込みで前車と接触寸前まで詰めたら、「可夢偉のブレーキ、大丈夫でしょうか?」と、アナウンサー氏が心配してた。
[STG] ギャハハ、おっと失礼。ここは笑うところじゃなかったですね。しかし、実を言うと私も同じ様に思いましたけど(笑) あれは、J.アルゲルスォリに対して、”次にインから行きまっせ”と暗示を与えた。
羽端: お、攪乱作戦?
[STG] そこまではどうかわかりませんが、アルゲルスォリは、一回インを刺されていますから、”今度は行かせないゾ”という意志を固めたと思います。
羽端: そうだそうだ! ハイメは一度、可夢偉に抜かれている。だから、もう二度と同じことはやらせないぜ! と、ヘアピンを走る。可夢偉は、ハイメが絶対そうするだろう、という読みもこめて?
[STG] はい、可夢偉は”予定通り”だったと思います。J.アルゲルスォリはインを絞め絞めでヘアピンに入ります。そこを、アウトから!
羽端: なるほどねえ! このときは、さすがに立ち上がりで交錯して──というか、ハイメも可夢偉が外から来てるとは思わなかったでしょうし、互いに接触して、可夢偉はサイドポンツーンを壊す。けっこう、イッテましたよね、あれは!
[STG] 外から見てかなりひどいのでひっくりした、と言ったら、可夢偉も、「ボクもビックリしました」とおどけていましたけど。
羽端: で、壊れたら、壊れる前より速くなっちゃって!(笑)
[STG] こまったもんです(笑)
羽端: ほんと、「すごいすごい!」ってばっかり言っていて、ボキャブラリーが貧困ですが(笑)、でも、すごいんだから、しょうがない!
[STG] 上に同じ(笑) プレスルームでも、拍手と”コバヤ-シ”しか聞こえませんでした(笑)
羽端: 歴戦のハイドフェルトも、今日は可夢偉の方が速かったと、はっきり認めてましたね。
[STG] N.ハイドフェルトが認めたということは、ある意味、”F1界が認めた”ということだと思います。P.デ・ラ・ロサもそうでしたが、N.ハイドフェルトも、不遇で能力を出し切れていないけれど、才能は折り紙付きですから。