ホットライン2011 round10 ドイツGP 2/2
◆”よくない”クルマを入賞まで持ってくる可夢偉
羽端：あと、今回興味深かったのは、ドライバーのコメントと実際とのギャップというか、あるいは、コメントの”読み方”というか──。
STG：というと?
羽端：レース前の可夢偉って、クルマ（ザウバー車）については、記者会見で語るのもイヤというくらいに、ヒドイ状態だと言ってたでしょ。
STG：言ってました。
羽端：でも、決勝レースが始まってみたら、オープニング･ラップでは、例の”フィッシュ”状態で（笑）スルスルと順位は上げるし、そのあとも、それなりのタイムでラップするし。
STG：いや、確かに。でも、ザウバーには速さはない、ってことだと思います。
羽端：もちろん、土曜の夜の”ラストチャンス”にセッティングを変えて、日曜日は、それまでとは違ういい感じのクルマになっていたのかもしれないけど?
STG：規則でクルマは触れないので、それはないですね。
羽端：おお、そうか。それはさておき、コメントをどう”読む”かということにハナシを戻すと、いまクルマの状態はどうですか? と訊かれたときに、ひとりのレーシング･ドライバーとして、たとえば、「ちっともよくない！ とくにトラクションは悪く、タイヤを有効に使えてない」と答える。この答えは、掛け値なしで正直なところと思うけど、でも、では、そういうクルマが「24台」のなかで見たときに、どのくらいの位置にあるのか?
STG：タイヤを有効に使えるマシンなら、誰にも負けない、ということじゃないかな。
羽端：さらには、ドライバーと組み合わされたときに、どのくらいのパフォーマンスを発揮できるのか?
STG：とにかく、速いマシンに乗せてみたい。ただし、乗るには･･･。
羽端：それはまた、別の判断基準で見なければいけないと思うわけです。
STG：ですね。
羽端：今回でいえば、可夢偉はあのように語ってたけど、でも、フリー走行でのペレスのポジションなんかも考え合わせると、そんなに悲観的になることはないのではないか、とか。こういう展望というか、願望というか──
STG：モーソーというか（笑）。
羽端：そう、妄想！（笑）でも、レース観戦って、こういう”展望ごっこ”なんじゃないですかね、実は?
STG：まさしく！ それぞれ勝手に妄想できるから面白いんですよ。そういう妄想をいかにさせてくれるか。だから情報が必要なんですね。
羽端：妄想の積み重ねと組み合わせ！（笑）
STG：そうそう。
羽端：あと、今回おもしろかったのは、タイヤの使い方競争でした。とくに、セブ（セバスチャン･フェッテルの愛称）と（フェリペ･）マッサでしたっけ、「お前が先にプライムに換えろよ！」競争（笑）。
STG：あ、フェッテルと?
羽端：それがついに、ファイナル･ラップまで続いた、という──。
STG：換えなかったらどうなったんだろう、と思いました。タイヤが持たなかったかも、だけど。
羽端：あれは、レギュレーションがらみだったのでは?
STG：ですね。
羽端：あの二人は、オプション〜オプションとつないでいて、プライムを使ってなかったと思う。でも、チームやドライバーが、そこまで”使いたくない！”と思うようなタイヤを持ち込むというのは、サプライヤーとしてどうなんだろう? この件、ミスター･ハミー（ブリヂストンの浜島裕英さん）に訊いてみたいけど。
STG：返事は決まってます。”人さまのタイヤですから”（笑）。
羽端：うん、彼は紳士だから、黙って微笑むだけでしょう。
STG：ですね。しかし、興味深い点ではありますね（笑）。
羽端：ところで、（ルイス･）ハミルトン＋マクラーレンが見事に激戦を制しました。流れが変わったかな?
STG：ブリヂストンからマクラーレンに移籍した今井さんは、「レース中、緊張しっぱなし」と言ってました。
羽端：それだけ、戦いがシビアだったと。
STG：ですね。タイヤ交換のタイミングをどう活かすか。ライバルの動きを睨みつつ、あらゆる状況を想定してピットインの瞬間を見極める。これは大変な作業だと思います。
羽端：裏舞台も楽じゃない。
STG：まさに。レースはドライバーだけが戦っているのではなくて”チーム戦である”ってことですね。今井さんには、”御愁傷様ですけど、やってる方がタイヘンなほど、観ている方は面白いので、今回のレースは最高でした”と伝えました（笑）。
羽端：苦笑いしてたでしょ?（笑）
STG：です。でも、満足そうでもあった。マクラーレンのリリースで、ハミルトンがその状況を捉えたコメントをしています。「勝つのはいい気分だけど、今回は頭脳戦だったから、喜びも一入」って。その陰に、今井さんのような力があったのは、日本人としても嬉しいですね！
羽端：外野はいつも気楽で（笑）。
STG：それが外野であるファンの特権、てことで（笑）。
