イタリアGPでデモラン!!RA300裏話-3◆座屈したサスペンションアーム
イタリアGPで、優勝50周年を記念してデモランを行なうホンダRA300は、コンストラクターとローラ社の共同開発で、凄まじい突貫工事でたったの6週間で急造された。
テストもままならなかったRA300が、最後の配線がつながれて、ともかく走れる形になったのが9月3日。イタリアGPのスケジュール開始の4日前。翌4日月曜日に、『グッドウッド・フェスティバルofスピード』でお馴染みのグッドウッド・サーキットにRA300を持ち込み、CAN-ANレースでアメリカにいたサーティースではなく、リザーブドライバーのクリス・アーウィンの手でシェイクダウンが行なわれた。
そこでは問題は出なかった。問題がでるほどペースが上げられなかったといった方がいかもしれない。その後、急ぎ空輸でイギリスからミラノに到着したのは9月7日木曜日、セッション開始前日だった。
スケジュール初日の金曜日にサーティースが走行を開始すると、フロントサスペンションのメッキ部分に座屈の兆候を示すシワが発見された。
ホンダとローラのメンバーは、大慌てでライバルチームからパーツや工具、そして彼らの手助けを受け、ピットガレージで設計し直した(!!)アームを夜を徹して制作して本番を迎え、予選9番手を得た。
F1史上に残る接戦を演じたサーティースが、真っ先にチェッカードフラッグを受けた裏には、きわどいドタバタ劇と共に、他チームの協力というロマッチックなストーリーも隠れていた。
[STINGER]山口正己
photo by Honda