セナを思い出して走ったよ(ハミルトン)
シンガポールGPは、10年の歴史の中で、初めてウェット路面でスタートすることになり、そのコンディションが災いして凄まじく激しいレースになった。
心配した通り、スタートで大きなアクシデントが起きた。ライコネン+フェラーリ、フェルスタッペン+レッドブル、フェッテル+フェラーリ、アロンソ+マクラーレン・ホンダが戦列を去ることになり、レースの興味は半減したかに見えた。
しかし、誰も走ったことがない初めての雨のマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットというリスキーなその状況を、唯一、待っていたのはルイス・ハミルトンだった。嬉々としてスタートしたハミルトンは、セナを思い出しながら、張りつめた集中力でゴールを目指した。
—-今年から、ウェットレースの場合もセーフティ・カー先導ではなく通常のスタンディング・スタートに戻されました。長い間、雨の中での伝統的なスタートは見ていませんでしたが、ウェット・トラックでのスタートがアクシデントに影響はあったと思いますか?
ルイス・ハミルトン(以下、ハミルトン):ウェットでのスタートは素晴らしいよ。グリット上はウェットではなかったし、ローリングスタートは、水煙が酷くなるから、もっと危険だったかもしれない。スタンデングスタートは、正しい判断だったね。
—-アクシデントを誘発したのでは?
ハミルトン:そうは思わないよ。キミはとても素晴らしいスタートをしたようだね。セバスチャンはあまり良くはなかった。いくつかの理由が、僕はすべてを見ていないけど、キミが素晴らしいスタートをして、そして、不幸にもレーシング・インシデントが起きてしまったと思うよ。
—-この後、メルセデスやレッドブルよりもフェラーリがうまくやれるレースはどこですか?
ハミルトン:僕たちがどう考えているか?ってことかな。マレーシアはOKだと思うよ。そして、ハイダウンフォース・サーキットである日本では接近するだろう。レッドブルもとても強いと思う。僕たちが最強ではないかもしれないね。そして、メキシコ、オースティンはうまくやれると思うよ。ブラジルはライバルが強いだろうね。フェラーリは特に強いだろう。本当に、次のレースではとても接近すると思うよ。予想するのは難しいけど、例えば、メキシコにハイダウンフォース仕様のクルマを持っていったとする。でも、とてもドラッグが少なく、ダウンフォースを少しだけつけたクルマが僕たちを負かすかもしれない。まぁ、全部、聞いた話だけどね。そこにいけばわかるさ。
—-チャンピオンシップの観点から、今日はあなたにとってパーフェクトな結果でしたか?
ハミルトン:もちろんさ! 答えは明らかだよ。今日は、僕たちにとって、よりパーフェクトなシナリオじゃなかった。このサーキットにいると、暑くて、乾燥したコンディションで別世界にいるようだよ。僕たちは本当にあまり多くの望みを持っていなかったし、良いスタートの可能性とわずかなストラテジーに賭けて、1つか2つポジションをあげる。そして、他のクルマの信頼性によって1つポジションがあがるかもしれない。でも、雨が落ちてきて、僕はとてもハッピーになったよ。僕がどれだけ嬉しかったは想像できないと思う。普通なら、雨の時には少しばかり心配したり、ちょっと気苦労をしたりするけど、それはなかった。誰もここのレインコンディションでドライブをしたことがないけれど、僕はこういうのが好きなんだ。他のドライバー達よりも、こういうコンディションが大好きなんだ。こういう状況だと、宝くじやチャンスが出て来ることを知っている。戦いの場を均一にするし、本当のレースになり、僕はとても興奮するのさ。たくさんのクルマが消えたけど、僕はエンジョイしたよ。大きなチャレンジだったけど、イージーにやり遂げたよ。
レース全体をとおして、僕の心の中にはセナのことが浮かんでいた。彼は明らかに大きなリードしていたモナコGPでウォールにヒットした。僕は常にそうならないようと思い出していたんだ。僕も似たような経験をしてるけど、そこから学んでるからね。僕の心の裏側で常に思い出す。そう、彼が僕に話しかけるようにね。そして集中して、一緒にキープしたんだ。
【翻訳:Masataka Hoshi】
Photo by MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team