ホットライン 2017 round15~16 / マレーシアGP~日本GP・マクラーレン・ホンダの真実?!
日本GPを前に、久々の好評企画、『ホットライン』が復活!!
クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとSTINGER編集長が、マレーシアGPまでを振り返りつつ、鈴鹿への期待を語ります。メインテーマは、もちろん、最後のマクラーレン・ホンダ!!
◆“離婚”発表後の鈴鹿ラストラン
羽端:もしもし。大変ごぶさたで、失礼しました。
STG:お、久しぶりです。お元気でしたか?
羽端:ええ、何とか。しばらくの間、ちょっと旅をしていた、ということにしておいてください(笑)。
STG:ハハハ(笑)。ところで、あっという間に「鈴鹿」(日本グランプリ)がやってきたんですが。
羽端:そうですね、もう「鈴鹿」ですね。これでリアルな秋が来たなという感じもします。いまや、秋の季語の一つではないですか、「鈴鹿」は(笑)。
STG:そのくらいに、F1やグランプリがこの国に浸透しているといいんですが。
羽端:それはともかく、今年はホンダにとっての大事件があった年になりました。
STG:う~ん。でもそれは、いいコトだったんじゃないかな、と。
羽端:ははあ!
STG:ゼロからやりなおし、ですからね。あ、これはトロロッソと組む来年の話も含めてですが。
羽端:うむ。
STG:そもそもが、いきなりマクラーレンと組んだのは、久々にF1に戻った帰り新参としては不自然でした。
羽端:まあホンダとしては、第二期ですか。いわゆる“セナ/プロ時代”の。あの連戦連勝の想いがあったのでは?
STG:だったとして、時代が違うし、すでに第3期てF1の世界でホンダは力不足がわかっていたはずなのに、いやわかっていなかったってことでしょうかね。
羽端:うーん。
STG:ともあれ、その第二期も、まずはF2で社員をヨーロッパに馴染ませるいう前段階があって、そしてスピリットというチームでいわば足ならしをしてからウィリアムズにエンジンを供給するというストーリーを創ってから参戦しています。
羽端:そうだったですね。
STG:なので、今回のマクラーレン・ホンダは、最初から期待しつつも心配山盛りだったので、基本というか、初心に戻る、という意味で、来年が楽しみ、ということなのです。
羽端:なるほど。予備校的な時間も研修期間もなくて、いきなりホンバンで通用するという読みが、そもそも、あまりに甘かった、と。それはそうかもしれないなあ!
STG:ホンダは、2年間やってきた方向が間違いだったことに気付いて、今年は思い切り方向展開をした。いわば、ゼロに巻き戻した。その前の2年間を捨て去って、まったく新しいチャレンジとしてスタートしたので、今年の前半は、ダメでもしょうがなかった、と今では言えますね。しかし、思い切った切り換えをした成果がハンガリー辺りから現れてポテンシャルが上向き始めてきました。
羽端:なるほど~。でも、これは勝手な想像でしかないですが、マクラーレン・サイドは、今年のスタート時点で、もう(離婚を)決めてたんじゃないかなと思ってます。
STG:ほう?
羽端:冬というか、シーズンオフの間に、マクラーレン・サイドでもいろいろ検討していて。このとき、対スポンサーということは大きかったのではないか。成績が上がらない状況を、企業としてどうするか。自分たちはちゃんと対応している、それができるのだということを、対外的に、現スポンサーにも未来のスポンサーにも伝えなければならない。その変革の一例が、パワーソースの変更。ただし、冬の間に状況とホンダが変わるかもしれないので、春のテストまでは待とう、と。
STG:確かに。しかし、好転するどころか、あまりに高い目標設定でスタートしたのから壊れまくりだった。
羽端:春の時点では、そうでしたよね。信頼性が低かった。そこで彼らは「判断」して、その後は、ホンダを“この世界”に残すために、トロロッソとホンダをどう“結婚”させるか。仲を取り持つことに集中した。
STG:いやいや、そんなお人好しはいないでしょう(笑)。
羽端:まあ、大外れかもしれませんけどね(笑)。そして、さらに想像ですけど、そうした「判断」をする際の時間差ですね。この三年間近く、マクラーレン側は、ずっと一種のイライラ状態だったのではないかとも思います。
STG:どうもホンダは遅い、と。
羽端:そうですね。たとえばですが、ヨーロッパから何かの技術を入れろと提案したとしても、その合否の判断が現場ではできない。判断はできても、結果として、それが「動く」には本社の役員会の賛成が要る。現場での判断ができない。とくに予算が絡んだ場合には。
STG:う~ん、流れはどうか知りませんが、役員会の問題、というのはあたらずとも遠からずの気がします。ハイブリッドの経験が豊富だから、直ぐに勝てると上層部は思っていたのではないか、という人もいますからね。
羽端:実際にはホンダ側の判断がとくに遅いということはなかったのかもしれないけど、ヨーロッパの“レース人”には遅く見えた。まあ、呈示されたエンジンがものすごく速ければ、社長の返事が少し遅れたって、マクラーレン側としては何の文句もなかったんでしょうけど(笑)。
STG:それはどうですかね。社長かどうかわかりませんけど、キモを握っている上層部の思惑を現場が気にしなければならなかったのだとすると、自由闊達な開発は無理ではないかと思います。予算も、上層部が決めて、その範囲でしか下はできない。だから、その考えが修正されるまで、というか、徐々にであっても、“温度差”がわかるまで、現状では、だからトロロッソくらいがちょうどいいと思うわけです。トロロッソとなら、与えられた予算や諸条件の中で、ちょうど同じくらいの立ち位置で開発に勤しめるかな、と。
羽端:なるほど。次のトロロッソとは、マクラーレンよりもう少し“いい”協力関係が築ければいいなと、端から思ったりしますが。
STG:その通りです。なので、むしろ来年に向けて、長谷川F1プロジェクト総責任者以下がのびのびと力をだせるのではなか、と勝手に思ってワクワクしますね。
羽端:個人的には、「二チーム供給のホンダ」を見たかったですね。同じホンダ・エンジンが供給されたとして、車体の差って、そもそもあるのか。それがあるとすれば、どのくらいのものなのか。
STG:ですね。でも、いまとなってはそれはもう少し先の楽しみにしておきたいです。というか、そうなるための力をホンダが持っていることを証明するために、来年は重要な位置づけなるわけですが。
◆雨の予選と晴れの決勝
羽端:でも、いまはマクラーレン・ホンダは速くなりましたよね! トップスリー×2=6台の、その下にいますから。
STG:ですね。フェルナンド・アロンソだけでなくマレーシアではストフェル・ヴァンドーンが、予選も兼性も7位を守ってくれましたから。
羽端:離婚を宣言したマクラーレンは、ちょっと後悔してるかも?(笑)
STG:まさに、それを実現してほしいですね。マクラーレンも、“負けたら、マクがマヌケに見える”と、ある種いさぎいいコメントも出したりしてますから。
羽端:ハハハ(笑)。ただ、トロロッソの“シャシー・ポテンシャル”がどのくらいか、そのへんがなかなかイメージできない。
STG:いや、それを期待する前に、トロロッソに不自由をさせないパワーユニットを提供する、という順番でしょう。
羽端:と、来年のことをウンヌンする前に、あの、金曜と土曜は、鈴鹿は雨なんですか?
STG:ですね。金曜日はサンダーストーム。まぁ、雷雨なので雨の分量はわからないけれど、降水確率は午前中70%、午後90%。最近の日本の気象状況は、あちこちで洪水になる大雨が降ってますから。いや、ここではそれは関係ないけど(笑)。
羽端:ということは、ドライコンディションでの状況は、日曜日のレースになってみなければ、わからない?
STG:金曜日と土曜日が雨の予報で、決勝はドライ。フリー走行がまるで役に立たない。
羽端:それは、おもしろいといえば、限りなくおもしろいですね!(笑)。
STG:ですね。何が起きるかわからない状況になりますから。
羽端:でも、雨の鈴鹿、その予選というのも、興味シンシンです。
STG:もっとも、どう転んでも上位チームは上位チームなので。
羽端:そういえば、鈴鹿を初めて、他のクラスのクルマでではなく「F1で走る」というドライバーがけっこういますよね?
STG:中でも、スーパーフォーミュラで活躍したストフェル・ヴァンドーンとピエール・ガスリー。二人は、マクラーレン・ホンダとトロロッソですから。これはいろいろな関連が見え隠れして、注目度は高くなりますね!!
羽端:そうですね。そして、雨の中、彼らがどんなものか。それも興味ありますね!
STG:雨もですが、難攻不落の鈴鹿を走り慣れている彼らがどんな活躍をするのか。興味津々です。スーパーフォーミュラのポテンシャルが認識されることになれば、それはそれで嬉しいですし。
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