目を覚ませ、フェルナンド!!
2009年から2011年までトロロッソに乗っていたハイメ・アルゲルスアリというドライバーがいた。
彼が、スペインの先輩アロンソについて、「フェルナンドは、選択を誤っていなければ、8回はワールドチャンピオンになれていた」というようなコメントした、というニュースがあった。
確かに、ここ数年のアロンソの行動をみていると、F1でワールドチャンピオンを取りたいと考えているとは思えなくなる。
ドライビングのスキルの高さは、現役でいえばルイス・ハミルトンかフェルナンド・アロンソだろう。
今回のバーレーンGPのスタートをみても、完璧だった。クラッチミートのタイミングは機械がやるのでそう大差ないとして、混雑極まりない1コーナーまでのポジション取りや周辺の認識能力が、どれをとっても、お手本といえる完璧さ。しかし、ワールドチャンピオンは、運転の巧さだけでは取れはしない。
現役のワールドチャンピオンは、アロンソの他に、セバスチャン・フェッテル、ルイス・ハミルトン、キミ・ライコネンの4名いるが、この4人は二つに分類できる。
複数チームでチャンピオンを取ったドライバーと、単一チームでしかチャンピオンを取れていないドライバーだ。この視点で見ると、別格なのがハミルトン、ということになる。
1回のキミ・ライコネンは別にして、セバスチャン・フェッテルは4回タイトルを取っているが全部レッドブルだ。アロンソは2回ともルノー。しかし、ルイス・ハミルトンは、マクラーレンとメルセデスで戴冠している。つまり、チーム選びと“機を見て敏”の能力で、ハミルトンが一枚上手、ということだ。
だからセバスチャン・フェッテルは今年、タイトルを取りたい。単に数でルイス・ハミルトンに負けたくない、ということだけではないはずだ。
アルゲルスアリが言いたいのはそこだろう。アロンソは、運命のつかみ方を間違えてしまった。マクラーレンがホンダとの契約を反故にしたときに、アロンソの意見も入っていたはずだ。アメリカ人で、自分のやり方がF1にまかり通ると思っているように見えるザック・ブラウンがホンダと別れたがったのは、ボスのマンスール・オジェーの使いっ走り雇われ社長としては、ありの選択。これは、2014年からマクラーレンのレースディレクターに抜擢されたエリック・ブーリエにしても同じだ。レースをよく知っているブーリエも、オジェーの意志通りに動いているに違いない。
この流れにアロンソは従っていることになる。もはやアロンソの目標は、ワールドチャンピオンになることではない? KIMOAというブランドを立ち上げ、そちらの商売に熱心にご執心。インディ500とル・マン24時間はいいけれど、それぞれ『世界三大レース』だ。そうそう簡単に片手間で勝てるレースではない。
そもそも、その流れに乗っかっているトヨタもトヨタ、という気もしたりだが、それはそれとして、とはいえ、アロンソがル・マンやインディ500に参戦することだけを取れば歓迎すべきことだけれど、もうひとつ、“なにか”が足らない。
改めて、アロンソに期待したいのは、目を覚ましてくれることだ。余計なお世話だけれど、気分で別れた女房を批判したり、片手間にF1て、それは違うでしょ?
[STINGER]山口正己
Photos by Jiří Křenek/active pictures、McLaren