シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その4・なぜF1は“金の世界”と言われるのか
記録だけでなく、記憶に残すために。
『F1』それは一般的にエフワンと呼ばれます。正式名称は、ワールドチャンピオンシップ・フォーミュラワン・グランプリ。F1世界選手権。
日本でグランプリというと、歌謡グランプリとかクイズグランプリ、M-1グランプリが浮かんで、なんだか庶民的なイメージがあるかもしれませんが、グランプリというのは、直訳すれば大賞であり、最高の栄誉、という意味になります。エフワンと言えば、“最高峰”という言葉が浮かぶのはそのためです。
要するに、世界各国で行なわれるあらゆるレースの中で、最も高度で最も権威があり、そして最もお金がかかるのが、レースのグランプリであるエフワン、ということになるのです。
どうして金がかかるのか。それは、車両規則が他のカテゴリーに比べて緩やかだから。制約が緩いと、勝とうと思えばやることがたくさん出てきます。そもそも、勝とう思わないでエフワンに参戦しているチームなんか存在しません。参加することに意義があるなどというきれい事は、F1にはありません。F1は、弱肉強食の厳しい階級社会の戦いだからです。
ともあれ、全員が勝とうと思って参加しているので、自分たちのチームが少しでも優位に立てるように、と考えると、やりたいことだらけ。特に、クルマというハード、それもチームのために2台(2人のドライバー用)だけしか作らないからコストは極端に割高になる。だから、そこにお金が掛かるのは当然の帰結です。
ちなみに、F1は、“F-1”ではなく、“F1”と表記します。ハイフンを入れてしまうと、自衛隊が過去に使用していた戦闘機の名前になってしまいます。1台の値段がとてつもなく高価で、高速で移動するという面では、同じですね。
そうそう、少し違う角度からレースにお金が掛かることを説明するには、“レースは殺人のない戦争”という名文句をもってくればいいかも。戦争に膨大なお金が掛かることは誰でも知っています。お金ががかかるだけでなく、結果として場合によっては儲かるから、誰かさんが一生懸命なのかどうかは知りませんが。
[STINGER]山口正己
Photos by STINGER、Renault Sport Formula One Team