シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その11・美に変えて、見せる
記録だけでなく、記憶に残すために
富を美に変える、というフレーズがあります。いくらお金を持っていても、そのお金を背負って街中を歩くわけにもいかない。富を象徴として見せるために、装飾品があり、美術品があり、クルマがあり、家がある、という考え方です。F1を中心とするモータースポーツにこの側面が存在します。
装飾品やクルマ、絵画の蒐集や立派な家。多くの人にとって憧れである富の象徴ですが、レースに資金を供出することは、そうした欲望の中で、最も効率のいい、かつ、見返りが期待できるクレバーな姿なのかもしれません。
モナコGPが、お金持ちの集まるレースとして有名です。確かに、世界中から集まったのではないかというほどの大型クルーザーがモナコ湾に集結します。加山雄三の光進丸も、ここではかすんでしまうくらいのでかいクルーザーのオンパレード。
カジノ前広場には、スーパースポーツカーが大挙して押し寄せ、オテルドパリのパーティには、数億円と思えるジュエリーを身につけた淑女が集い、カジノでは高額チップが乱れ飛びます。
お金を持って歩いて自分のお金持ちを自慢することはできません。そこで、“富を美に変えて”、クルマや装飾品、家、などに置き換えて見せる。この流れのひとつを効果的に実践できるのがモナコGPというわけです。
ちなみに、モナコGPの高級ツアーで200万円というのがありました。しかし、そんなツアーに参加する人なら、ファーストクラスを使うから、エアチケットだけで100万円以上になってしまうのではないか、と思いきや、集合はニース空港。飛行機は?と尋ねたら、「お客様はプライベートジェットでお越しになられます」、だそうです。当然、そのツアーのディナーにはドライバー参加が当たり前。世の中広いのです。
ただし、モナコは序の口、とも言われます。本当のお金持ちは、そんなところで見せない、と。世の中には上がある、ということで。
[STINGER]山口正己
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