シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その16・インディのルーキーテスト
うんちくがF1を楽しくする?!
インディ500に向けて“インディウィーク”が始まりました。延々とフリー走行と、細かく別れた予選が行なわれ、5月27日の決勝に向けて興奮を高めます。
そのインディ独特の行事として、F1にはない“ルーキー・テスト”があります。去年、デビューしたフェルナンド・アロンソも、これを受けさせられました。“ルーキー・オリエンテーション”と呼ばれるテストを走らない限り、インディアナ・モーター・スピードウェイの競技に参加することできません。2度のワールドチャンピオンであっても、例外は認められないのですが、過去にこれを蹴ったことで走行を止められたドライバーがいました。
1968年10月、シーズン最後のメキシコGPを終えたホンダ陣営は、将来のデータ取りと称して、インディアナポリスで、第一期最後のメキシコGPを走ったホンダF1を走らせたのでした。ドライバーは、ホンダF1第一期の最後を飾った1964年ワールドチャンピオンのジョン・サーティースだったのですが、結局、サーティースは、走ることができませんでした。チャンピオンのプライドが、走行前のルーキー・テストを良しとしなかったためでした。
サーティースは、インディアナポリスのホテルまで来ながら、コースには現れず、ホンダの中村良夫監督は、しかたなく、ホンダF1のデビューレースから2年間を走ったアメリカ人のロニー・バックナムを呼び寄せてテストを走ったのでした。
ちなみに、これまで、F1のチャンピオンになってからインディ500を走ったドライバーは、グラハム・ヒル、ジム・クラーク、エマーソン・フィティパルディ、ナイジェル・マンセルなどがいますが、彼らはルーキー・テストを受け、そして最後のリスタートをミスしなければ勝ったマンセル以外全員がインディ500に優勝しています。
[STINGER]山口正己
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