シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その17・いつが一番速いか?
うんちくがF1を楽しくする?!
時代が違うと、いろいろ比較できないことがあって簡単に答えは出ませんが、いろいろ面白い話がありますね。
たとえば、エンジンパワーでは、1980年代中盤のターボ時代が一番でした。なにしろ、1500ccで1500馬力という凄まじさ。当時のターボエンジンは、リヤタイヤより小さいくらいだったのに1500馬力。
市販車のエンジンは、“リッター当たり100馬力なら高性能”といわれます。なのに1500ccで1500馬力って、リッター当たり1000馬力!! 凄いなんてもんじゃなかった。
エンジンパワーがいくらあっても、車体がダメだと勝てない、というのが速いクルマ、中でもレーシングカーの常識だけれど、この頃のターボ・エンジンは、その常識も覆すほどすごかった。1980年代後期のウィリアムズ・ホンダとマクラーレン・ホンダは、だから強かったのです。
とはいえ、その後、コンピュータによる解析が進化し、特にエアロダイナミクスのレベルが圧倒的に高くなり、それに呼応するようにレギュレーションがどんどん厳しくなってスピードが抑制され、さらにそれを乗り越えようとデザイナーが知恵を振り絞る、といういたちごっこが続きました。
ところが、去年、タイヤが大きくなり、相対的なマシンポテンシャルが高くなるという“異変”が起きた。1950年から始まるF1の歴史の中で初めて、レギュレーションがゆるやかな方向に修正されたのです。
“F1は世界一の乗物でなくてはならない”というテーマを護るために、FIAは、レギュレーションを変更した? もちろん、安全性を護ることも大切ということで、今年はHALOが装着されるという筋書きになったのでした。
ラップタイムでいくと、マシンは年々速くなっています。これは、タイヤの果たしている役割も大きいです。タイヤのグリップが上がったことがタイムを大きく進化させている。となると、昔のF1に今のタイヤを履かせたらどうなの? という新たな疑問が出てきて、ここでもいたちごっこが始まることになりそうですが、とりあえずは、現在のF1が最も速い、ということになりそうです。
[STINGER]山口正己
Photo by McLaren