シリーズ・バーチャルセーフティ・カー :その23・モナコには表彰台がない?!
他愛ないことにこそ、真理が潜んでいる?!
通常のF1GPのスケジュールは、金曜日から日曜日の3日間ですが、モナコだけは例外。木曜日から始まり、金曜日をスキップする3日間になります。金曜日を休むのは、生活道路を閉鎖するコースという性格上、間に一息入れるためと言われるけれど、実は、観客の滞在期間を1日長くして、観光立国のインカムを増やそういうちゃっかり政策でしょ? という声もあります。
ともあれ、金網で囲まれたリスキーな公道コース、というだけでなく、ここもモナコを特別にしているけれど、さらに、モナコを際立てているのは、表彰台がないこと。それは、ヨーロッパの階級社会を凝縮した存在としてモナコGPを位置づけています。
通常のF1GPは、背後にスポンサーのロゴが表現された表彰台に上位3人が招かれます。しかし、モナコの“表彰台”にはバックドロップがない。モナコGPのトップ3が招かれるのは、皇族が待ち受けるロイヤルボックスだからです。要するに、ドライバーの中から、勇敢に戦った3人だけが、太閤が待つ部屋に通されてご褒美をいただく、そんなイメージです。
ドライバーはいわゆる労働者であり、ローマ時代の戦車競技の選手と思えばいいかもしれません。F1ドライバーが下層階級というと日本ではピンとこないかもしれませんが、階級社会が存在するヨーロッパでは、ドライバーは上流階級の人間の仕事ではない、というのがヨーロッパに今でも脈々と受け継がれる階級社会ということになります。
チェッカードフラッグが降られた瞬間、モナコ湾に停泊する無数のクルーザーが、一斉に汽笛を鳴らします。激しい闘いを讃えるその響きは、哀愁を漂わせ、ジンとする素敵なムードを演出する一方で、夢の世界から現実の世界に引き戻す合図のようにも響くのです。
[STINGER]山口正己
Photo by Red Bull Racing / Getty Images/Red Bull Content Pool