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シリーズVSC :その31・案外お茶目だった中村良夫初代ホンダF1監督

ウィットの効いた存在だった中村さん(左から二人目)。モズレーFIA会長(右から二人目)も、ポルシェ使いとして名を成したヨッヘン・マスも、一目置く存在だった。

他愛ないことにこそ、面白さが潜んでいる?!

初代ホンダF1マネージャーの中村良夫さんは、厳しい反面ウィットの効く存在だった。モナコGPのパーティで、当時FIA会長のマックス・モズレーと出逢うと、モズレー会長が直立不動でペコペコしていた。1960年代に中村さんがホンダの監督だったころ、モズレーはペーペーの新米メカニックだったためだが、往年のドライバーであるヨッヘン・マス(写真右)とモズレーさんと別れた後、中村さんは、「私がけっこう偉いことが分かったでしょ」とお茶目に仰った。

F1GPのパドックで“ナカサン”の愛称で親しまれた中村さん。晩年、世界自動車技術会の会長として海外で行なわれる学会に参加するため足を伸ばしてF1GPの会場に姿を見せた。ポルトガルGPの夜、サングリアをしこたま呑まれていたので、“そんなにお飲みになって大丈夫なのですか?”と尋ねると、シラッとした顔で一言。「医者は止めてますが」。

1994年、アイルトン・セナと同じ年に冥界に旅立たれた。日本にも、気骨のある存在がいた。

[STINGER]山口正己
Photo by STINGER

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