ハミルトンの落胆とイギリスの高揚–F1イギリスGPハイライト
6月下旬から7月中旬にかけてのイギリスは太陽の季節。イギリスは、案外北国で、日本との位置関係は、樺太と同じような軽度。海流のせいで若干暖かいけれど、北海道と同じくらいの寒さになるという。そんな北国の長く厳しい冬の反動から、彼らはこの期間が大好きだ。
ヘンリー・レガッタからウィンブルドン・テニス、全英オープン・ゴルフ、そしてグッドウッド・フェスティバルofスピードやイギリスGPまで、アウトドアの祭典が目白押しのこの期間でも、連日青空になることはめったにない。だが、イギリスGPの週末は、快晴に次ぐ快晴。路面温度が50度を超えたイギリスGPは、非常に珍しく、だから人々の高揚感はいつも以上に高まっていた。
シルバーストンに詰めかけた観客はもちろん、その中心にいた唯一のイギリス人ドライバーとして一身に期待を集めてポールポジションを奪ったルイス・ハミルトンの意識が高揚したのは当然のことだったのだ。
そんなシチュエーションの中で、スタート直後にキミ・ライコネンに追突された。そこから鬼神の追い上げで2位に食い込んだ集中力とテクニックは素晴らしかったが、ハミルトンが悔やんだのは、ライコネンに当てられたことというより、スタートでミスして、フェッテルと、チームメイトのボッタスの先行を許したことだったのではないだろうか。ポールポジションからトップでターン1を抜け出せていたら、少なくともライコネンとの接触は無かったはずだ。
イングランドはサッカーのワールドカップでセミファイナルに勝ち上がることはできたけれど、その流れはイギリスGPにはつながらなかった。サッカーの盛り上がりをみるにつけ、ハミルトンの落胆ぶりが心に痛い。
[STINGER]山口正己
Photo by MERCEDES AMG PETRONAS Formula One Team