借りてきた猫のようなライコネン-–F1イギリスGPハイライト
3位でチェッカードフラッグを受け、先輩ドライバーのマーチン・ブランドルからインタビューを受けたキミ・ライコネンは、いつになく殊勝な態度だった。理由は、スタート直後の3コーナーで、イギリス期待のルイス・ハミルトンのメルセデスに追突し、スピンさせてしまったからだった。
「ルイスには悪いことをしてしまった」。いつになくじょうぜつに、ライコネンはコメントしたが、それは、コースを埋めた凄まじい数のイギリスのファンの圧力に圧倒されただけでなく、超高速バトルを闘ったドライバーだけが感じる達成感があったからではないだろうか。
レース中は、ピットに対して、いつものように「さっきいったじゃないか、黙ってろ」的なコメントを発していたのは、興奮状態にあったからこそ。そしてコクピットでエネルギーを使い果たし、レース後は優しい気分になっていた。
しかし、表彰台への控室でも、表彰式でも、ハミルトンとライコネンは言葉を交わすことはなかった。お互い、バツが悪いという状況だったのだが、このわだかまりがあとをひかないことを祈るばかり。
[STINGER]山口正己
Photo by Ferrari S.p.A / FERRARI MEDIA