ハミルトンだけではなかったF1イタリアGPの主役
2018F1GP第14戦イタリアGPは、いつも通り、スペクタクルでドラマチックな週末だった。予選では、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・フェッテル、そしてキミ・ライコネンと、8秒間に3回タイムが更新され、その度に場内放送が絶叫。これまで最高の予選として歴史に深く刻まれた。
そしてレースも、スタートからドラマの連発だった。ルイス・ハミルトンが老獪な作戦とテクニックで優勝したが、イギリス人以外にも主役はいた。
◆キミ・ライコネン 粘りの100回目表彰台
タイヤ表面に黒い筋が見えた。タイヤが偏磨耗して気泡ができ、酷くなるとバーストも考えられるブリスターの兆候。ルイス・ハミルトンの援護射撃で、行く手を阻むボッタス+メルセデスの見えない壁に遮られたゼッケン7のフェラーリのコクピットで、しかし、ライコネンは慌てず騒がず、ゴールに向けて沈着冷静な仕事をこなしていた。→リアタイヤは、ブリスターが出た部分の皮が一枚向け落ち、ライコネンの厳しいレースを語っていた。
そういえば、激しさを極めて予選の後、好例の記念タイヤへのサインの際、ミハエル・シューマッハの息子のミックに優しいまなざしを向けたキミ・ライコネンを見て、これまでと一味違うキミを感じたファンは多かったはず。パパになったライコネン、生まれ変わったと言えそうだが、決意と集中を持続させる鋭いドライビングテクニックは、円熟味を増したことを証明した。
◆セバスチャン・フェッテル 歓喜の狭間
スタート1周目に、二度に渡ってハミルトン+メルセデスと接触、2度目の接触でスピンして最後尾に落ちたのはいただけなかったが、最後尾からジリジリと追い上げて4位。ルイス・ハミルトンとのシリーズ争いは30点差と厳しくなったが、残り7戦の反撃が見物になった。
◆フォースインディア ピンク・ショック
チームの売却問題で、出走できるかどうかの不安定な状況だったベルギーGPで5位(ペレス)と6位(オコン)、続くイタリアGPも、6位(オコン)と7位(ペレス)。イタリアでは、6位のグロジャン+ハースが失格になって繰り上がりだったとはいえ、結果的に、2戦とも、三強に続くセカンドチームの先頭を切ったのは、ピンクのフォースインディアだった。
◆HELO 最後の議論?
予選Q1開始早々、1コーナーでマーカス・エリクソンが激しくクラッシュした。ベルギーGPのスタートで、アロンソのマクラーレンの空中飛び膝蹴りを食らったシャルル・ルクレールに続いて、ザウバーがHALOによってドライバーを護ることになった。もはや、かっこわるくてもHALOが要らないと言う意見に出番はなくなった。
◆バルテリ・ボッタス いい仕事
中盤では、スピンして最後尾から追い上げてきたセバスチャン・フェッテルを、そして終盤にかかる頃にはタイヤ交換から出てきたキミ・ライコネンを、それそれ巧みに押さえ込んで、チームメイトのルイス・ハミルトンのシリーズチャンピオンに大いに貢献した。一方で、マックス・フェルスタッペンのレッドブルとの先陣争いでは、暴れん坊をものともせずに弾き飛ばす“大活躍”。モンツァを埋めたティフォージにも、“いい仕事”を提供した。
◆セルゲイ・シロトキン初ポイント
グロジャン+ハースが、アンダーフロアのレギュレーション違反で失格になったための繰り上げとはいえ、今年絶不調で最下位チームのウィリアムズで、セルゲイ・シロトキンがF1に初ポイントを計上したのはめでたいことだった。
◆牧野任祐 初勝利
F1のヨーロッパラウンドを中心にサポートレースとして行なわれるF1の直下カテゴリーのFIA-F2で、牧野任祐(ロシアンタイム)が初勝利を飾った。予選を「失敗して」15番手からスタートしながら、多くがスーパーソフトでスタートする中を、3台だけが選んだミディアム・タイヤでレースを始める作戦が的中、6周目にトップに立つと、チームメイトのA.マルケロフや、ポイントを争うG.ラッセル、L.ノリスを寄せつけずに圧勝した。
◆鈴鹿&ホンダ 未来構想
決勝レースが始まる直前に、鈴鹿サーキットの経営母体であるモビリティランドの山下晋社長と、本田技研工業の山本雅史モータースポーツ部部長が会見を開き、鈴鹿サーキットでの日本GPを3年間契約を延長し、本田技研工業株式会社が、30周年記念となる今年の日本グランプリの冠スポンサーとなることが発表された。牧野任祐のF2勝利と併せて、日本のF1に勢いが戻るかもしれない期待が膨らんだ。
[STINGER]山口正己
photo by FERRARI