シンガポールGPの台所事情と未来思考
シンガポールは、今年11回目。ということは、契約が5年なので、二度目の更新になった。
2008年、F1史上初のナイトレースということで、大いなる話題を呼んでシンガポールGPはスタートした。F1グランプリを観ながらショッピングや観光を楽しめるレースは他になかったからだ。午前中はホテルでゆっくりし、昼飯は飲茶をいただき、ウィンドウショッピングでも観光でも、昼間の時間が自由に使えて、夜祭の高揚感の中でセッション開始を待つ。過去のグランプリでは考えられなかったシチュエーションがシンガポールGPの魅力になった。
一方、世界各国の名高いアーティストを招聘して、コンサートを同時開催することで、話題をさらに広げて人気を博したが、開催が重なってくるとその“珍しさ”がトーンダウンし、徐々に観客も減ってきた。
日本に限定すると、ある意味、鈴鹿の日本GPとの食い合いとも取れる。しかし、契約続行が難しいのではないかと思われていたが、二度目の更新で冠スポンサーとなったシンガポール・エアラインのスポンサー継続が実現した。11年目のシンガポールGPには、日本人ファンが例年に増して多かった印象を受けた。
経済的に潤沢な予算をかけられない台所事情は、例えば、ゴール後の花火が若干寂しくなっていたことなどから予測できるが、観客に対するホスピタリティは充実したものもあった。今年、パドックハウスが二階建てになっていたのを見て、改めてシンガポールの主催者が、商材としてのF1GPを大切にし、F1グランプリのクォリティを高く保とうとしていることが伺えた。
これは、バーニー・エクレストンの思想と共通のものだが、そこで気になるのは、リバティメディアの“商魂”が、極端にいえば薄利多売を目指す、ある意味アメリカ的な方向で、それは、F1のクォリティを尊重するシンガポールの主催者や、バーニー・エクレストンのスタイルと反りが合わないのではないか、というところだ。
一方で、シンガポールは今年、初めて日本のアーティスト『SEKAINOOWARI』を招いてコンサーを行ない、日本人を中心に多くのファンを集めて盛況だった。また、シンガポールGPのツイッターの公式アカウントに日本語が加わって、ますます日本からの観客誘致に力が入っていることを感じさせた。
つまり、日本からの集客に力を入れているということだ。Hondaが冠スポンサーになり、30回目を迎える鈴鹿サーキットの日本GPも、新たな時代に向けて、シンガポールを参考にできるかもしれない。
[STINGER]山口正己