ガスリーを護ったF1クォリティのバイザー
ロシアGPで、トロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーは、スタート直後に、ブレーキトラブルで残念なリタイアを喫したが、その前に、ガスリーは御難を逃れていた。
前を走るダニエル・リカルドのレッドブルから、なにやら壊れたパーツの破片が飛んできて、ヘルメットのバイザーに当たったという。
ガスリーは、「時速300km/hくらいで飛んできたかもしれないけれど、右目辺りのバイザーにそいつは当たったんだ。本当にビックリしたけれど、バイザーは本当に強いと思った」と無事を報告した。
そのバイザーだが、ピエール・ガスリーが使うアライ・ヘルメットに尋ねると、当然のことながら、単なる透明の板ではなかった。
「バイザーは、ポリカーボネート(PC)製の3ミリ厚で、その上に、ザイロン材を主体としたバイザーパネルが貼られています」
ポリカーボネイトは、透明度が高く、耐衝撃性/耐熱性/難燃性/などが優れた、まさにヘルメットのバイザーにうってつけの素材だ。アライでは、厚さ3mmのポリカーボネイトのバイザーに、強度の高いバイザーパネルを追加したものを使っている。
バイザーパネルというのは、バイザー上部のバイザーステッカーが貼られる部分の補強パーツ。来年の規格からは、ヘルメットシェル本体のアイポート開口部(窓の部分)の上辺が下げられることで、バイザーパネルは廃止されるという。
バイザーパネル使われるザイロンは、桁違いの強度をもつ素材。世界一強く、驚異的な燃えにくさを特徴とするこれまたヘルメット用としてぴったりの優れモノだ。もちろん、安くはないが、安全が優先される。
気にしなければ何の変哲もないヘルメットやバイザーだが、ガスリーの安全が護られたことで、ここでもF1らしく、日進月歩のテクノロジーの進化が凝縮していることが証明された。F1はこうじゃなければ!!
[STINGER]山口正己
photo by TOROROSSO