またもやタイヤに優しい“キミ・マジック”–メキシコGPのキミ・ライコネン
メキシコGPは、特に終盤に凝縮した闘いが見られたが、目立たないながら職人技を見せたのが、3位に入賞したフェラーリのキミ・ライコネンだった。
上位陣がタイヤを傷めて2ストップする中で、唯一の1ストップ。16周目に交換したスーパーソフトで、ゴールまでの54周を走ってみせた。
ライコネンは、9月のイタリアGPでも、表皮が磨耗しきったタイヤでチェッカードフラッグまでを走りきり、リスクを背負ったタイヤを感じながら走る能力を見せたが、メキシコ・シティのコース路面はタイヤに厳しくないとはいえ、高地でダウンフォースが少なく、タイヤに負担のかかる状況下で、改めて能力を披露した。
冷たい男と言われるが、今年後半はアイスマンのニックネームを返上しそうな笑顔がたくさん見られるようになった。アメリカGPでは久々の勝利だったから当然として、イタリアGPでは、愛息と戯れるいいパパぶりも。
2013年の開幕戦から、途中2戦の休戦を挟んで116戦目という実に久々に優勝したアメリカGPのトップ3会見で、ルイス・ハミルトンに、「38だっけ、39だっけ?」と年齢を聞かれて、「39歳、昨年は40だよ」と応える意外な正直者の側面も持ち合わせている。
ますます脂の乗り切ったフィンランド人は来年、F1デビューを果たした古巣ザウバーに移籍して19年目のF1にチャレンジするが、まだまだトップクラスのポテンシャルを見せてくれそうだ。
[STINGER]大和 空/Sora Yamato
photo by FERRARI