特殊だったアロンソのクラッシュ
103回を迎えてインディ500は、来週の決勝を前に、19日と20日に予選が行なわれている。今年は、すでに5台が壁の餌食になる荒れた展開になっているが、プラクティス2日にオーバルの洗礼を受けたフェルナンド・アロンソのクラッシュは、他のクラッシュとは異質のものだった。アロンソだけがアンダーステアで壁に当たった。
他の4台は、コーナー途中でスピンして、回転しながら外壁にクラッシュしているが、フェルナンド・アロンソは、コーナーを膨らんで壁にこする形で接触。しかし、200マイル/hオーバーのスピードでの“軽く擦った”エネルギーは凄まじく、跳ね返されて内側のバリアに激突、さらにジャンプしながら跳ね返えされてもう一度コースを横断して外側のバリアに接触してやっと止まった。
直前を他車が走っていたことで、タービュランスでフロントのダウンフォースを失ったのかもしれなかったが、いずれにしても、スピードコントロールをミスしてテールを滑らせたスピンとは別のもの。まさに、弘法も筆の誤り的なアクシデントといってよかった。
アロンソはこのアクシデントの原因が明確に分かっているはずで、二度と同じ轍は踏まないはずであり、つまり後遺症のないクラッシュだった。しかし、別のところが足を引っ張ることになった。
マクラーレンのチーム力が翌日の走行までにマシンを修復できず、アロンソはプラクティス3日目を、丸一日、待たされた。F1も同じだが、インディ500がチーム戦であり、単調なコースを200回周回するだけに見えながら、実は緻密な積み重ねの上でこそ勝利が実現する、という厳しさを、フェルナンド・アロンソは肌で感じながら、粛々と予選二日目を待っている。
フェルナンド・アロンソの今の目標は、世界三大レースの制覇ではなく、33台出走の最終列に入るための1周だ。
[STINGER]山口正己
photo by INDYCAR