カナダとフランスで見たハミルトンとフェッテルの凄さ
F1GPは、連戦モードに突入した。ここで、改めて、振り返っておきたい。カナダとフランスで、セバスチャン・フェッテルとルイス・ハミルトンの凄さを見せ付けられた、ということを。
カナダでは、セバスチャン・フェッテルのフェラーリが、厳しい燃費の中でルイス・ハミルトンの追撃を振り切ろうと、ストレースでは燃料をセーブし、その分をコーナーで稼ぐギリギリのドライビングを続けた。結果として、あとで5秒ペナルティを食らうことになる4コーナーでのはみ出しが起きたと想像できるが、多くの視点はギリギリのドライビングのことを忘れて、フェッテルのミスを衝く内容だった。もちろん、ミスはない方がいいに決まっているが、そのミスが起きた状況こそが重要なこともある。カナダのフェッテルのミスは、その好例だった。
フランスでは、ルイス・ハミルトンの腕前の確かさが際立った。特に終盤、使い古したハードタイヤでの走行は、見事だった。終盤のハミルトン+メルセデスのフロントタイヤの外側には、異変を示す黒い筋が明確に現れていた。にも関わらず、最終ラップにファステストラップを塗り替えた。結局、その直後に、ファステストラップのためにピットインしてソフトタイヤにフェッテル+フェラーリが最終的にファステストラップの1ポイントを獲得したが、タイヤの種類と状況から、唖然とするしかないハミルトンの凄さを見せつけられた。
ルイス・ハミルトンは、フランスGPで79勝目を記録、ミハエル・シューマッハの持つ91勝に並ぶのも時間の問題と見られている。しかし、F1は活きている。メルセデスの天下が簡単に続くわけでもない。フランスGPで、メルセデスは、8戦終了時点でシーズン6度目の1-2フィニッシュを飾り、圧勝ムードだが、2位ボッタスと3位のフェラーリ+シャルル・ルクレールとの差は、僅か0.923秒。メルセデスの二人は、“決して楽なレースではなかった”と口をそろえている。
F1の面白さは、“F1”という高度なブランドであり、そこで展開するハイレベルの走りであることをもう一度思い出して、連戦のオーストリアを待ちたい。短いコースで追い越しが難しいレッドブル・リンクでは、二人だけではない誰かが、違う凄さを見せてくれるかもしれない。
[STINGER]山口正己
photo by MERCEDES