ウィリアムズの複雑な、いや、簡単な事情
ウィリ
ウィリアムズ・グランプリ・エンジニアリングは、低迷にあえいでいる。ウィリアムズと言えば、1978年に、サウディアのスポンサーを得て突然躍進し、1980年のアラン・ジョーンズ以後、ワールドチャンピオン6人、コンスとラクターズタイトルも5回獲得している名門中の名門。創始者のフランク・ウィリアムズには“Sir.”の称号がイギリス国家から授けられるチームだった。ウィリアムズ・ホンダやウィリアムズ・ルノーがレースをするシーンを思い出させる。しかし、今、1975年のチーム創立以来最大のピンチに陥っている。
2014年は、バルテリ・ボッタスとフィリッペ・マッサの二人は表彰台の常連だったが、2015年に下降が始まり、それでも2016年はボッタスが一度だったが表彰台を射止め、2017年には、アゼルバイジャンでランス・ストロールが危うく2位(?!)の3位表彰台を含む入賞多数。
ところが、2018年になるとガクンと競争力が落ち、セルゲイ・シロトキンと組んだランス・ストロールが8位と9位に1回ずつ入賞しただけ。そして2019年はロベルト・クビツァとジョージ・ラッセルを迎え入れたが、第9戦オーストリアGPまで、唯一の無得点チームであえいでいる。
今やウィリアムズの話題といえば、オーストリアGPで手違いからロベルト・クビツァがドライバーof the Dayに選ばれたことと、二人のドライバーに格差がある、という話題しかない状況になっている。
二人とは、ロベルト・クビツァとジョージ・ラッセル。ウィリアムズがジョージ・ラッセルに傾いているのではないか、というのが、世界各国のメディアにウィリアムズが取り上げられる唯一の話題だ。
全体の傾向として、クビツァがスポンサーを持ち込んでいるのに、ウィリアムズはラッセルを贔屓しているのではないか、というもの。特にクビツァの母国ポーランドでは、その待遇に対する“抗議”が渦巻いている。
しかし、ジョージ・ラッセルに肩入れするのは、ある意味正当。ウィリアムズが使うパワーユニットがメルセデスで、ジョージ・ラッセルはメルセデスの育成ドライバーなので、当然の結末だ。
パーツが満足に供給できない状況の中で、二人のマシンを均等に扱えるなら、とっくに無得点から脱しているはず。パワーユニットの使用料も、ラッセルのおかげでディスカウントかもしくはフリーになっているはずだが、ポーランドのメディアは、データを駆使して、パワーユニットが、ラッセル用は本家メルセデスと同等で、クビツァには、レーシングポイント以下のものが与えられていると“推測”している。
悪いときには周囲もどんどん状況を悪くみて、さらにイメージを下げ、シーズン途中でロベルト・クビツァがシートを失う、という噂まで出ているけれど、ウィリアムズにとって大切なのは、今をなんとしてでも抜けだすこと。
それは簡単な作業ではなく、もがきが続いているけれど、冷たい夜が長くても、昇らない太陽はない。寒い冬はやがて張るが来る。ウィリアムズの復活を心から待ちたい。
[STINGER]山口正己
photo by WILLIAMS