ハンガリーGPハイライト–究極のトップ争いだけではなかった
ハンガリーGPはF1GPらしいハイクォリティなレースだった。マックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのトップ争いは、ドライバーの腕だけでなく、マシンのポテンシャルだけでなく、タイヤ交換のタイミングを含むチームの総合力の闘いとなった。だか、ハイライトはそれだけではなかった。
◆スリーワイドの1コーナー
スタートでグリッド上位3台がスリーワイドで1コーナーに進入した。一瞬、アウト側のハミルトン+メルセデスが前に出るかにみえたが、フェルスタッペン+レッドブル・ホンダが踏ん張り、ここでレースの緊迫感が一気に押し上げられ、最後までそのハイテンションのままでレースが進んだ。
◆ハミルトン+メルセデスの47周目タイヤ交換作戦
ハミルトン+メルセデスは、フェルスタッペン+レッドブル・ホンダを追い回してアタックをかけ、44周目にDRSを使ってオーバーテイクを仕掛けたが果たせず。タイヤが6周新しいハミルトンが優位にあり、このせめぎ合いが続けば70周レースの67周目に、エンジニアの計算は的中した。
逆転の可能性があった。しかし、メルセデスはそのままレースを続けるのではなく、追う立場からギャンブルとも思える作戦に出た。47周目、メルセデスは、「追いつけるの?」と心配するハミルトンをピットに呼んでタイヤを交換。ピットアウトしたハミルトンは、フェルスタッペンの約20秒後にいたが、残り20周で追いつき、タイヤがへたったレッドブル・ホンダを70周レースの67周目に難なくパスした。ハミルトンの腕を信じたエンジニアの完璧な計算だった。チェッカーを受けたハミルトンは、作戦参謀のジェイムス・ボウルズに「作戦を疑ってゴメン」とラジオで詫びた。
◆5位以下は周回遅れ
トップ争いが極めて高度だったことは、3位以下との差が証明した。2位フェルスタッペン+レッドブル・ホンダと3位フェッテル+フェラーリの差は約1分、1周が1分20秒のコースなので、フェラーリは危うく周回遅れを逃れたが、5位のサインツ+マクラーレン以下は周回遅れだった。
◆アルボン+トロロッソ・ホンダの67周目
オーバーテイクで順位を上げたのはハミルトンだけではなかった。残り10周で、トロロッソ・ホンダのアレキサンダー・アルボンが、チームメイトのダニール・クビアトとレーシングポイントのセルジオ・ペレスをパスしたのも見事だった。これでアルボンは10位に食い込み、貴重な1ポイントをチームに啓上した。トロロッソ・ホンダは序盤に、こんなシーンも見せてくれた。
◆フェッテル+フェラーリの表彰台
フェラーリのセバスチャン・フェッテルは、「今回はスピードが足らなかった」と、メルセデスとレッドブル・ホンダに脱帽したが、タイヤマネージメントを誤ったチームメイトのシャルル・ルクレールを残り3周でパスして表彰台を手に入れた。
◆マクラーレンの躍進
フランスGPから、マクラーレン・ルノーの快進撃が続いている。マクラーレンの活躍は、若い二人のドライバーの巧さも貢献している。週末はランド・ノリスのリードで進んでいたが、レースになると先輩カルロス・サインツが、序盤の混乱を巧みに切り抜けて7番グリッドから5位に躍進し、そのままのポジションをキープして周回遅れながらゴール、5位10ポイントは、セカンドグループとしては最高の収穫と言えた。
◆光ったラッセル+ウィリアムズ
いつもなら最後列に並ぶウィリアムズだが、ルーキーのジョージ・ラッセルが15番グリッドからスタートした。スタートをしくじったクビアト+トロロッソ・ホンダとマグヌッセン+ハースをパス、13番手という今のウィリアムズとしては上出来のポジションまで上がった。“裏ドライバーof theデイ”は、二十歳のイギリス人に進呈したい。
[STINGER]山口正己