「国内レースも観てください」–F1を経験した山本尚貴の次の夢
日本GPの金曜日フリー走行1を担当した山本尚貴。緊張の面持ちでピエール・ガスリーのレッドブル・トロロッソ・ホンダのコクピットに収まり、1時間半の走行を完璧にこなした。
クルマを降りた山本は、報道人に囲まれて、初のF1実体験を振り返った。
「全然あれが自分の実力ではないと思っています。練習すれば速く走れるドライバーは一杯いると思いますが、限られた時間の中で挙動を感じ取って次の挙動に対応できるかがドライバーの能力と思うので、最低限のことはできたと思いますけど、満足はできていません」
「今回走って分かったのは、日本のレース以上にサーキットのコンディションが改善していくとラップタイムに影響することでした。タイヤのコンパウンドの違いよりも、コースコンディションの変化が凄く大きく感じました」
◆もう1セット、ソフトで行きたかった
「当然、2回目に出たときよりも3回目がコンディションがよくなっていると感じたので、もしそこでもう1セットソフトを履けばかなりイケたと思います。ただし、他の選手も3セット目入れたらタイムが上がりますが、そうなったときに自分のタイムがどこにいたか見たかったです」
「(もう1台のトロロッソ・ホンダのクビアトとの差は)積んでいる燃料もトラックコンディションも違うので。(フリー走行1の路面コンディションで)フェラーリが最初から27秒出たか、と。パワーユニットのモードもFP1と違うので、どのくらい改善してQF(予選)に合わせられたかは確実には言えませんが、ピエールがFP2で乗った時に(クルマに対するフィーリングが)同じ意見でした。(予選8番手は)ピエールの力とエンジニアの努力、チーム全体のスタッフの力があってQ3に進めたのだと思います」
◆走り込めば慣れる
「(英語でチームとやりとりしたが)英語は堪能ではなくもっと勉強しなくてはと思います。必要最低限はできたけれど、それじゃダメで、プラス、Gを受けながら普通に会話するのは凄いな、と。初めてスーパーフォーミュラ乗った時も、凄いと思ったけれどいつの日か普通に(会話)できるようになりました。走りと経験でそうなると思います」
「ものすごいパワーでした。正直、スーパーフォーミュラよりGが強かったです。シートベルトの腰と股が緩んでしまって。新品ベルトで、繊維が伸びたンだと思いますが、シートから身体が浮くようでそれを支えるのに力を使ったので、体力的に辛かったけれど、その辺も初めてのF1で、クルマの姿勢を感じ取るシートポジションが必須だと思いました。Gに耐えられる身体の姿勢を作らなければならないですね。300km/h、楽で速く走れる姿勢があるので。ピエールも今年シート創り直していると聞いて、苦労しているんだな、と思いました」
「F1の加速、パワーは凄い。タイヤ太くて速いけれど、スーパーフォーミュラがすべてで負けているわけではないですね。スーパーフォーミュラは、ヨコハマ・タイヤのポテンシャルがかなり高いので、ある意味、凄いと思いました」
◆スーパーフォーミュラでの力を見せられた
「スーパーフォーミュラで成績を残したドライバー、がこういう風に走れる証明はできたかな、と。スーパーライセンスポイントでも、FIAとしても軽視せずに日本のスーパーフォーミュラをちゃんと見てくれていると思います」
喜びを一気に話した山本尚貴は、F1に乗るという夢を果たし、次の夢は?という質問に、即座にこう応えた。
「そうですね。夢が叶いました、で終わらせてしまっては寂しいし、ファンのみなさんもこの先を期待してくれていると思います。とはいえ、自分がいくら乗りたいと言っても、不可能です。今回も、ホンダやトロロッソの尽力で乗れたことに感謝していますが、次につなげるために、失敗するとレッテルを貼られてしまう怖さがありました。何をもってこれが成功かというのは難しいですが、たくさんのメディアもきていただいて、海外のジャーナリストも一定の評価をしてくれたようなので、スーパーフォーミュラのタイトルが、価値あることが証明できたと思います」
「時間がたつほど悔しいですね。もっと乗ればタイムを上げられます。乗ったら負けたくないですから。直接比較チームメイト、0.1秒、といわれても、ソフトを履いたらもっとイケただろうし、悔しいですね」
「そのためにも与えられたチャンスを活かして、今回いい仕事がチームに対してできかな、と。評価はしてもらえたので、期待しつつ、今回こうして走らせてもらえたからこそ、次が芽生えたと思うので、もう一回チャンスがあれば乗りたいですが、国内のシーズンも残っているし、これから先、日本でレースをすることになれば絶対的なチャンピオンというポジションでいきたいと思っています。いいモチベーションを与えてもらえたと思います」
◆スーパーフォーミュラのチャンピオンを!!
「再来週の鈴鹿は、これがあってもなくてもチャンピオンを取りたいと思っています。たくさんの人に来てもらって、最終戦のスーパーフォーミュラで、(F1の)FP1を走った山本尚貴がどんな走りをするか、と期待されたかな、と思いますので、国内選手にもっと目を向けてもらえることができたと思います。国内でも強い、と思ってほしいので、応援を、よろしくお願いします!!」
[STINGER]山口正己
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