いつもと違うバルテリ・ボッタス。新たな伝説の序章
バンピーなサーキットof theアメリカスを完全攻略して、2019F1GP第19戦アメリカGPのポールポジションを奪ったバルテリ・ボッタス。いつもと違う温和な表情が、むしろ不気味な闘争心を感じさせている。
予選が始まる直前に、メルセデスのガレージに入ったカメラが、ボッタスを追った。いつも地味なフィンランド人は、一人一人のメカニックやエンジニアに、確認するようにカチッカチッと音がするような力強い握手をして回っていた。決意を感じさせる光景だったが、その通り、トラックリミットに苦戦するルイス・ハミルトンを余所に、コースレコードを叩き出し、追いすがるフェラーリに土俵際で見事なうっちゃりを決めた。
このポールポジションにはいくつかの意味があった。ボッタスのポールポジションが決まった直後に、メルセデスのトト・ウルフ代表は、いつもと違う嬌声をあげてポールポジションを喜んだ。後半戦のベルギーから、イタリア、シンガポール、ロシア、日本、メキシコと、6連続でフェラーリにポールポジションを召し上げられていたからだ。7月のドイツGP以来のメルセデスのポール奪取を、ウルフは「再びポールに立つのはいい気分だ」と喜んだ。
さらに、ボッタス+メルセデスのタイムは、コースレコードだったが、トップ3の差は僅か0.067秒。ウルフを興奮させるに充分な僅差だった。
1. ボッタス+メルセデス 1分32秒029
2. フェッテル+フェラーリ 1分32秒041
3. フェルスタッペン+レッドブル・ホンダ 1分32秒096
ボッタスは、「リードを維持できるかどうかは僕次第」と冷静にレースを見ている。
単なる優れたナンバー2ではないことを、闘魂を秘めて最速ラップを刻んだフィンランド人の温和な表情がが示してくれた。レースが楽しみになった。
[STINGER]山口正己
photo by MERCEDES