決然とした絶対に譲らない鉄の意志。新生ガスリー誕生!!
ピエール・ガスリーが、ルイス・ハミルトンとの我慢比べに打ち勝った。ブラジルGP最終ラップの最終コーナーでのルイス・ハミルトンとの一触即発の高速最終コーナーバトル。そこで見せた、23歳のフランス人の決然とした意志のご褒美として、初の表彰台が与えられた。
終盤、ハミルトンは捨て身の走りを見せてた。6度目のタイトルを決め、失うものはない。残り2戦も勝って、シーズンを気持ちよく終わりたい。そう思っているに違いないと思わせる姿勢でブラジルGPの週末を進めていた。
レース終盤、いったんは勝負の外にいるように見えていたが、ハミルトンは諦めていなかった。セフティカーのタイミングでタイヤを交換し、新しいタイヤで2位のアルボン+レッドブル・ホンダに近づき、そして仕掛けた。
アルボン+レッドブル・ホンダも怯まず、逆にワールドチャンピオンを揺さぶる姿勢も見せた。ハミルトンはさらに果敢に迫り、アルボン+レッドブル・ホンダに追突、アルボンのF1初の表彰台をフイにした。
そこでハミルトンはフロントウィングを傷めたが、新しいタイヤを利して、最終ラップにガスリー+トロロッソ・ホンダのDRSゾーンに入った。ガスリーは必至に防戦したが、最終コーナーの立ち上がりでハミルトンのラインが理想に近く、サイドbyサイドで高速最終コーナーに差しかかった。左がハミルトン、右がガスリー。300km/hを超えるまさに一触即発の高速バトルが展開した。
僅かに前にいたハミルトンが、ジワジワと右に寄せ、アウト側のガスリーが抜かれると誰もが思う状況だった。だがガスリーはガンとして少しも譲らず、右足に渾身の力を込め続けてHondaのPUにフルスロットルをくれた。コントロールライン手前で、まるで何かにエネルギーをもらったようにゼッケン10のトロロッソ・ホンダがググッと加速してメルセデスを突き放した。見事なレーシング。Hondaのパワーとガスリーの決然とした意志が勝った。
ピエール・ガスリーは、マックス・フェルスタッペンに続く2位でチェッカードフラッグを受け、F1GP初表彰台に笑顔で昇った。
◆笑顔が戻った
シーズン前半を、夢に見たトップチームのレッドブルでスタートしながら、強烈すぎるチームメイトのフェルスタッペンに押しつぶされたたようにチームを追われ、トロロッソ・ホンダで出直すことになった。しかし、傷心に見えたのは最初だけだった。むしろ、肩の力が抜け、水を得た魚のような活躍が始まった。
そして向かえたブラジルGP。ドライバーズサーキットと言われるインテルラゴスのブラジルGPの週末は、生き生きとセカンドグループの最速の位置をキープし続けチャンスを待っていた。
フェラーリの2台が接触で消えるという異変もあった。ハミルトンに追突されたアルボン+レッドブル・ホンダのリタイアもあった。しかし、2位表彰台は、ピエール・ガスリーというフランス人のポテンシャルに値する結果だった。特に最終コーナーのバトルで引かなかった決意は、ハミルトンを破ったことでさらに自信になったはずだ。
ガスリーは、シリーズポイントで一気に6番手に躍進。また一人、キャラの立ったドライバーが出現した。2019F1GP第20戦ブラジルGPは、新生ピエール・ガスリーが誕生した記念すべきレースになった。
[STINGER]山口正己
Photo by Red Bull Toro Rosso HONDA