DASのもう一つの効果
メルセデスがカタルーニャ・サーキットで行なわれているF1合同テスト2日目に披露した、ステアリングでフロントタイヤのトー角を変えるDSA(ダス=Dual Axis Steering)は、フロントタイヤの空気抵抗を減らすだけでなく、タイヤの寿命を増やす役目も負っている。
通常、タイヤには、コーナリングやストレートの直進性を向上させるために、トーやキャンバーと呼ばれる傾きが付けられているが、傾いているということは、まっすぐ転がっていないことになり、ストレートでは路面の抵抗でいわばタイヤをズリズリと引きずって走っている。タイヤの角度は重要な要素だが、空気抵抗とタイヤ磨耗にとっては、歓迎されない状態だ。
ストレートスピードを上げる効果は即座にラップタイムに現れるが、対磨耗性は、連続周回を見ないと判断できず、テストの段階では、正確な性能を測ることはできない。Dual Axis Steeringはこれを解消する。
シーズンが開幕すれば、タイヤ交換のタイミングやレース終盤の状況から、このシステムの威力が証明されることになる。メルセデスの力がどこまでなのか、テスト初日の最後にサクッとベストタイムを記録したルイス・ハミルトンとボッタスが、2日目は、ハミルトンが1秒以上、ボッタスが2秒以上遅いペースで黙々と周回をこなして不気味さを加速した。
[STINGER]山口正己
photo by MERCEDES