シンガポール特派員からコロナ現地便り
シンガポールの高村特派員から、シンガポールのコロナ禍とシンガポールGPのレポートが届いた。公道レースの厳しい側面が伺われる。
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結論からいうと、個人的には今年のシンガポールGPは開催できないと思っています。モナコが早々に中止を発表したように、現状では公道サーキットでの開催は厳しいでしょう。
コロナウイルス感染拡大を防ぐ4週間(4/7-5/4)のサーキットブレーカー(回路遮断)中のシンガポール。必要不可欠な企業以外は在宅勤務/休業、総ての学校もオンラインや自宅学習に切り替わっています。
ここでいう“サーキットブレーカー”のサーキットは、単に公道を現していますが、サーキットと言えば、9月に行われるF1シンガポールGPがどうなるかも気になります。今年のF1シーズン自体も前半のレースが次々に中止や延期が決まり、いつ今シーズンを開始できるかもわかりません。
シンガポールGPのサーキットは都心の公道を使った仮設サーキットですから、毎年6月頃からサーキット設営が始まるため、開催ギリギリまで判断を遅らせることはできません。おそらくこの1〜2カ月以内に開催可否を決めなければ難しいのではないかと思います。
またシンガポールGPは、音楽フェスの場という側面もあり、毎晩世界のトップアーティストたちがレースの合間に野外ライブを繰り広げます。レースよりもライブ目当ての地元客も多く、毎年4月頃には出演アーティストが発表され、チケット販売の原動力の1つにもなっていますが、エンタメ業界も予定は白紙状態、現時点では出演アーティストを発表したくてもできない状態ではないかと思います。
シンガポールGPは世界で唯一の公道ナイトレースという魅力から日本を含め世界各地から観光客を引き寄せていますが、今の状況ではそれも期待できず、彼らをシンガポールに運ぶシンガポールGPの冠スポンサーでもあるシンガポール航空自体、普段の数%の運行に留まり、1日数往復していた東京便も週数便に激減、日々、赤字が増えていく一方でスポンサーとしての負担などできる状態ではないでしょう。
世界中のイベント業界が激震に見舞われている現状、シンガポールGP主催者も生きた心地がしないほどの不安な状態のはずです。
サーキットブレーカー措置が効果を示し、コロナウイルスのサーキットは、1日も早くブレークして欲しい一方で、シンガポールGPのサーキットはブレークすることなく、例年通りシンガポールの夜の都心に途切れることのない光のサーキットを描いてくれることを期待しています。
レポート:Takuho Takamura/[STINGER]
photo by [STINGER]/McLaren