F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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なぜ琢磨が凄いか!?

観る方は無責任に、三度目の牛乳を期待する!?

◆改めて、琢磨がインディ500に二度目の優勝を飾ったのは夢ではないが、なんだか夢心地で、2017年の初勝利とは違って、“安心して観られた”優勝だった。

◆インディ500は、世界三大レースの一角である。モナコとルマンとインディ500は、それそれ特徴のある歴史的なレジェンド・レースだ。

◆モナコは、『世界一高貴なレース』。上位3人は、表彰台ではなく、王室の待つロイヤルボックスに招き入れられる。チェッカードフラッグが振られた瞬間に、モナコ湾に停泊している無数のヨットが一斉に汽笛を鳴らす。平均速度は他のF1コースよりはるかに遅い160㎞/h程度だが、狭くてコンクリートウォールに囲まれたコースの危なさは、極めつけ。

◆ルマンは、『世界一過酷なレース』だ。24時間をレーシングスピードで走り続ける。F1はおおむね2時間のレースだが、ルマンは24時間だから、F1が終わっても、まだ1/12しか進んでいない。その長時間をレーシングスピードで走り続けると、マシンも人も、ヘロヘロになる。特に、今はシケインができて速度が下がったとはいえ、長いストレースは、危険が伴う。ドライバーは、タイヤがパンクしないことを祈りつつ、ひたすらアクセルを踏みつける。そこを24時間走るドライバーは、3人で交代でステアリングを握るとはいえ、ストレスは計り知れない。当然、ピットクルーたちも、気が張りつめた24時間になる。過酷さは比べるものがない。

◆そしテインディ500は、『世界一勝つのが難しいレース』だ。なぜ難しいかというと、まず、アメリカだから。イコールコンディションの国である。なので、勝てるドライバーが決められる、ということがない。もちろん、有力なドライバーやチームはあるが、車両規則もトップチームが有利ではないように考慮され、33のグリッドに並ぶドライバーは、全員に勝つ可能性がある。そして、超高速なので、ワンミスが壁との接触を誘発し、軽~く接触しても、スピードの高さに比例した衝撃は簡単にマシンを破壊する。そしてもうひとつ、オーバルコースの中でも、長方形の角を丸めた単調なコースは、左にしか曲がっていない。そこを500マイルイコール800㎞正確に走り続けなければならない。だれにでもチャンスはあるけれど、誰にでもそれができるわけではない。琢磨は、それを2回やってのけた

◆思えば、琢磨のレース人生は、インディカーで花開いた。もちろんそれはF1での苦い経験が蓄積され、そして19歳でカートデビューという遅咲きの琢磨が、やっとたどり着いた新たな世界で、鍛練に次ぐ鍛練を重ね、戦略を熟考して経験に重ね合わせ、そしてそれを実行する精神力と安定性を身につけた。琢磨だけがなせる技だ。

◆F1の時代に、琢磨に何度か、「92%で」と伝えたことがある。琢磨は100%の力を出すと、それは普通の人の120%になってしまうからだ。今回は、見事なまでにそれをじっせっした。いろ、92ではなく、今の琢磨は、95%をずっとキープできる術を手に入れた。

◆2017年は、プラクティスから終始安定したペースで上位にい続けて、勝った。今年、最速の日があっても驚かなかったが、予選3番手を見て、勝てないと思った。なぜなら、行き過ぎているからだ。世の中絶対にバランスが取れる。つまり、スタートまでにツキを含むそのバランスを使い切ってしまったと思っていた。レースにエネルギーをとっておかなければならない。しかし琢磨の成長は、凡人の計り知れないレベルに昇華していた。琢磨の走りがちっともリスキーでなく、言ってみれば落ち着いて観ていられたのは、そのためだ。

◆来年も勝ってしまって、以後、琢磨しか勝てないのではないか、そんな思いがした第104回インディ500だった。

◆ひとつだけ残念だったのは、無観客のスタンド。インディ500ならではの、「歓声が時速300㎞/hで回る」シーンがなかったことだった。だから来年、大歓声の中で、もう一度勝って、もう一度、嫌いな牛乳を飲む辛さを味わっていただきたい。

[STINGER]山口正己
photo by Hond

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