スパ-フランコルシャンのキモ
今週末は、2週間ぶりのF1GP。会場は、名うての難コースのスパ-フランコルシャンだ。
ところで、なぜスパが難コースかというと、真っ先に挙げられるのが“オールージュ”だ。コースの下を流れる川が、地層のせいで赤いことから赤い川というのがその由来だが、コーナーじたいで難しいのは、オールージュよりもそれに続く左コーナー。もちろん、オールージュも、下りから急激に駆け上がる地点なので、強烈な縦Gがかかる難所に違いないが、オールージュよりも、難しかったり恐怖を感じるのは、その先の右から左に切れ込むコーナーだ。
去年のベルギーGPのサポートレースで悲惨なアクシデントが起きたのは、そこだった。
まず、アプローチ区間が手前からまったく見えない。さらに、オールージュを駆け上がった地点から、路面が平坦に変化することから、Gが抜けてマシンが浮き上がる状態になり、タイヤのグリップが落ちる方向になるところで左にターンするので、文字通り地に足がつかない不安定なコーナーだ。
ところが、もっと怖いスポットが、その先に待っている。オールージュを駆け上がった先のキャメル・ストレートを抜けてシケインを通過したところから、下り坂ワインディング区間になる。下り区間は、地球の重力を感じにくく、ドライバーに安心感を与えないことから、オールージュとはまた違う恐怖心に襲われるのだ。
シケインの先の7コーナーを下り始めると、コーナーが次から次へと出てきて、14コーナーまで下りが続くのだが、永遠に下り区間が終わらないのではないかと思うくらいで、むしろ、素人にとっては、ハナからスピードを出せないオールージュよりも、下り続けるこの区間の方方が怖いかもしれない。
しかし、この恐怖のコーナーは、勝負所でもあり、腕の見せ所でもある。過去のスパ-フランコルシャンで、古くは、1988年のイーヴァン・カペリのレイトンハウスとリカルド・パトレーゼのウィリアムズのサイドbyサイドなど、このコーナーで見応えあるバトルが何度も繰り広げられた。ドライバーが例外なく、スパが好きと応えるのは、オールージュとこの下り区間で、恐怖に打ち勝つ能力が試されるからだ。
今年も、ここに注目しておくと、難攻不落のスパ-フランコルシャンをさらに楽しく観ることができる!?
[STINGER]山口正己
photo by Hond