ホンダの終焉にあっという間に対応したF1!!
ホンダがF1活動終結の発表を行なった翌日に、ホンダのパワーユニットを搭載するレッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリは、2022年からルノーを搭載することを決めたというニュースが届いた。
パワーユニットは、最も開発費がかかるアイテムだが、それは費用のことで、チームを立ち上げて継続することは、資金とは違う難しさがあり、一筋縄ではいかない。若干乱暴を承知で言えば、金をかければ開発できるパワーユニットは、替えが効くということだ。
それがいみじくも証明された。ホンダがF1活動の終了を伝えた翌日、ホンダの発表がいかに世界基準から外れたものだったかがアッという間に証明されることになった。レッドブル・レーシングとスクーデリア・アルファタウリが、2022年からルノーのパワーユニットを使うことが明らかになったのだ。
ただし、このニュースは、ルノーのシャリル・アビデブールのコメントをF1iサイトが伝えたもので、策士のアビデブールがどこまで正直者かどうかを加味すると眉唾ではある。だがそうだとしてもホンダの同行を世界が注目していることと同時に、本場ヨーロッパからは、極東の島国のコメントとしてしか受け取られていないことが証明されたと言えなくもない。
ホンダのF1活動終了の発表は、単にやめるという事実だけでなく、日本企業がいかに身勝手か、トヨタが辞めた時と同じく、世界中に伝わった。
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もしかすると、ホンダはアメリカ・ホンダされあれば、欧州はいらないのではないか、という邪推も聞こえるが、F1活動の終了というショッキングな伝え方によって、2030年と2050年の『カーボン・ニュートラル』を目指すためのカーボンフリー技術に邁進する強い決意を表明したかった、という受け取り方もできなくもない。
しかし、そうだったとしても引っかかるのは、お世話になった世界を足蹴にするような発表の仕方だ。トヨタも同じだった。どちらもF1活動の“役目が終わった”というニュアンスに聞こえた。
トヨタは突然の休止で、コンコルド協定違反に問われ、多額の違約金を払ったが、富士スピードウェイで二度とF1ができなくなったのと同じく、F1活動も停められた形になっている。
ホンダは時間をおいて発表しているので、そういうことにはならないだろうが、視点を変えると、トヨタにはルマンとニュルブルクリンク24時間があるじゃないか、という声も聞こえる。その意見は大きなお門違いだ。
テクノロジーレベルで両者は雲泥の差だからだ。イギリス政府がコロナ対策の酸素呼吸器をF1チームに依頼したのは、その技術レベルと制作能力が、人命を預かるレベルで高いことが理解されていたからだった。
さてホンダ、F1で培ったノウハウと人材を、カーボン・フリー技術に回すとのことだが、『F1をやっている会社だから』と夢を描いて入社した社員が、次の挑戦と八郷隆弘社長が表現するジャンルに、そう簡単に夢を交換できるかどうか、大いなる疑問が残された。
さらに、『F1をやっている』という妙な説得力のあるキャッチフレーズがなくなり、『カーボン・ニュートラルに挑戦している』という表現に、夢を持って入社を志願する人材が、F1以上にいるとは、残念ながら思えない。
[STINGER]山口正己
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