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角田裕毅の苦悩

苦悩を乗り越え、リラックスしてF1GPに溶け込めるまで、しばしの辛抱!?

角田裕毅が苦しんでいる。

デビューの開幕戦でいきなり9位に食い込んでポテンシャルを見せたが、2戦目のイモラでF1GPの洗礼を浴びる形でクラッシュ、マシンを大破させた。レースでは7位まで駆け上ってファンの期待を煽り立てたが、角田裕毅はクルマを壊してチームに損害を与えてしまった傷心の気持ちをツイッターにこう書いた。

「車が良かっただけに今回の出来事に関しては自分に本当にがっかりしています。何よりチームに申し訳ないという言葉しかありません。応援してくださった方々にも申し訳ないです」

イモラのクラッシュの後に、チームのフランツ・トスト代表から、「気にしなくていい。これからも思い切り走りなさい」と言われた言葉に感謝し、「その言葉で安心して走れます。これからも思い切り行きます」と言っていた。だが、第3戦のポルトガルGPでは、初めて走るコースだったことも手伝って、それまでと違って思い切りの良さが見られず、腰が引けた走りで予選は14番手、レースでも角田裕毅らしさがないままで15位でゴールした。

◆ジャパニーズ・ポジション
新人角田裕毅を、チームの先輩ピエール・ガスリーと比較するのは酷だけれど、ここまたの3戦の予選は、ガスリーの5位-5位-9位に対して13位-20位-14位。これまで多くの日本人と同じく“ジャパニーズ・ポジション”に甘んじている。

ジャパニーズ・ポジショントとは、14番手辺りの予選順位のことだ。いくつかの例外もあるけれど、多くの日本人ドライバーの予選ポジションはたいていこの辺り。話は若干外れるが、先週スーパーフォーミュラで驚ろきのスピードを見せたジュリアーノ・アレジは、ヨーロッパF2では、決してトップではなかった。にも関わらずに日本では速かったのは、日本のレベルがよく分かったということだ。職人ぞろいのスーパーフォーミュラ、それも難易度の高い鈴鹿サーキットでのことだったことを考えると、さらに考えさせられた。

92%で走れるようになったら成績は着いてくる!!

ところで、レーシングドライバーの成長過程にはふたつのタイプがある。高いところから水準を下げていくタイプと、下から積み上げて水準を上げていくタイプだ。角田裕毅は、片山右京や佐藤琢磨と同じく前者。

佐藤琢磨もデビュー当時、“行き過ぎ”によるミスが目立った。本人にも直接伝えたことがある。「92%で走れば結果が着いてくる」と。

猫はジャンプする時に縮こまる。しかし、琢磨は背伸びした姿勢からジャンプしようとして足が滑ってしまったようなレースが何度もあった。頑張り屋の本人の100%は、実は常人の120%になっていた。だから92%だ。角田裕毅の今が佐藤琢磨に重なる。

限界を超えて走るという意味では、後にプロフェッサーと呼ばれて冷静の代名詞となるが、デビュー3戦目にクラッシュして腕を骨折して第4戦を欠場した新人時代のアラン・プロストや、インディカーに転身して最初に走ったオーバルでいきなり激しくクラッシュしたナイジェル・マンセル、さらには、雨のカナダGPのフリー走行で、フェラーリのチームメイトのジョディ・シェクターが「これ以上速くは走れない」とピットに戻った直後に、10秒も速いラップタイムを記録してシェクターを呆れさせたジル・ヴィルヌーブなどが同じく、限界を超えていく果敢なタイプだ。

角田裕毅は、明らかにF1マシンのポテンシャルの認識が足らなかった。F1に初めて乗ったドライバーは、ほぼ例外なくエンジンパワーとブレーキングパワーの強大さに度肝を抜かれる。角田も、最初のテストでまず驚いたのがパワーだったと言ったが、角田はそのパワーを恐れなかった。

クラッシュを喫した2戦目のイモラのシケインは、完全なオーバースピードが原因だった。テレビの解説で、「無理に曲がらずに、最初の右コーナーをまっ直ぐ逃げてしまえばよかった」と言ったが、それは無理な話。なぜなら角田裕毅は、オーバースピードと思っていなくて曲がっていく気満々だったからだ。

実際に、そのスピードを保ったままで最初の右を曲がって次の左に差しかかったところでスピンした。それも、アクセルオンでテールが流れている。つまり、立ち上がりの左コーナーを曲がったところで、イケると思ったからアクセルを踏んだのだが、さすがに速過ぎた。リヤタイヤが耐えきれずに瞬間的にグリップを失ない、180度スピンしてバリアに後から激突した。

角田裕毅は、ここでF1マシンの限界を知ったはず。F1マシンで不用意なアクセルオンが禁物だということを知った。ああした失敗は二度としないだろう。

そうして確認して会得していくタイプであることをトスト代表は理解して、だから「気にしないで自由に走れ」と伝えたのだ。安く済む奴ではないと思いつつ、角田裕毅の果敢さとプラス思考に期待を寄せているということだ。

セルジオ・ペレスが、初めてトップを争えるトップチームのレッドブルに乗ることになったとき、「トップクラスのスピードやチームに慣れるまで5~6戦はかかると思う」とコメントしていた。F1を経験した男のさすがの洞察力だが、角田は最初からトップでいくつもりだった。それが無理であることを知った今、そして時には急がば回れが必要なことを認識してスピードの水準を少々下げて、言い方を返れば行き過ぎに気をつけることをキモに命じたはずだ。

今週末のスペインGPは、世界中のグランプリコースの特徴が折り込まれている難易度が高いカタルーニャ・サーキットが舞台だ。それが終わると金網デスマッチと言えそうなモナコGPとなり、その後には超高速市街地コースインのアゼルバイジャンGPも待っている。ここはひとつ、学習を積んで、7月25-26日のフランスGPあたりを自分の開幕戦と位置づけて闘いの狼煙はそれまでお預け、ということでいかが!? なにせ今年のF1は23戦もあるのだから。

[STINGER]山口正己
photo by Honda

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