ハミルトン+メルセデス、がっぷり四つから崖っぷち!?
ブラジルGPの予選の予選で最速タイムを記録したハミルトン+メルセデスだが、終了3時間後に、FIAから“失格判定の可能性あり”のリリースが届いた。
問題は、“リヤ・ウィング・エレメント”。通常、リヤウィング最後端に立ち上がっているフラップは、DRSで作動させることができるが、『許容される85mmの間隔上限を超えていた』というもの。これが審議されることになったというものだ。
これについて、メルセデスだから大目にみて、結局は許されるのではないか、という憶測が流れているが、FIAの感覚はもう少し奥が深い。
FIAは、メルセデスだからではなく、これが表面化することがスキャンダルになることを懸念しているはずだからだ。
2011年、ザウバー時代のセルジオ・ペレスが、モナコのトンネル出口でクラッシュしたアクシデントを受け、FIAは無骨なサイド・プロテクターを短時間で義務付けた。この規則変更は、もちろん、安全性を高め、ドライバー・エイドの意味が優先されたはずだが、もう一つ、“社会的な見え方”を考慮したものといえた。
無骨なプロテクターをつけることで、FIAが“即応”したことを明確に示し、F1は危険だという風評の拡大を防いだのだ。
今回も、メルセデスを護るためというより、“チャンピオン・チームが抜け駆けしたというイメージ”を払拭する目的もあった、と考えるべきか。ヨーロッパでのF1GPは、日本で考えるよりはるかに一般的で、F1じたいのイメージを阻害する可能性が十分考えられる。
明確で即刻失格が可能なはずの違反に即応せずに検討するのは、そうした側面もありそうだ。
ハミルトン+メルセデスは、トラックリミット違反で最速タイムを取り消され、即座に行なった再アタックで、フェルタッペン+レッドブル・ホンダを0.4秒突き放す強さを見せた。決勝レースでは5グリッドダウンのペナルティを受けているが、5グリッドやピットスタートを簡単に取り返せる強さだ。
ヨーロッパを主戦場としているF1GPは、弱肉強食の世界であることを改めて思い出させている。
[STINGER]山口正己
photo by MERCEDES