最後を決めたタイヤ戦略–タイヤから観たアブダビGP
最終ラップにセフティカーが退出して、たった1周だけのスーパー・スプリントレースになった。5.281kmのヤス・マリーナ・サーキットで展開した渾身の1周に、2021最終戦アブダビGPの、いや、2021シーズンそのものが凝縮されていた。
新品のソフト・タイヤに付け替えたマックス・フェルタッペンが、12周走ったハード・タイヤのハミルトンをファイナルラップでソフトタイヤのスピードを最大限に活かしてタイトル獲得。タイヤの選択と使い方が重要なカギを握った。
<キーポイント>
• レッドブルのマックス・フェルスタッペンが、3ストップ戦略で劇的なアブダビグランプリを制し、自身初のドライバーズタイトルを獲得。フェルスタッペンは、セーフティーカー導入周回中にP Zeroレッド・ソフトタイヤへ交換し、ファイナルラップでトップに立った。
• ソフトタイヤを装着してポールポジションからスタートしたフェルスタッペンは、P Zeroイエロー・ミディアムタイヤでスタートしたライバルのルイス・ハミルトン(メルセデス)に、スタート直後オーバーテイクされた。フェルスタッペンが13周目にP Zeroホワイト・ハードへ交換すると、ハミルトンはその1周後にミディアムからハードへ交換しました。その後、バーチャルセーフティーカー導入周回中の36周目、フェルスタッペンは再度ハードタイヤへの交換を行い、セーフティーカー導入周回中の残り5周時点でソフトタイヤへ交換するため、最終ピットに向かった。
• セーフティーカーの影響もあり、トップ5が異なる戦略を使用するなど、レースを通して広範囲に渡る戦略が展開された。
• ポールシッターを含む8名のドライバーがソフトで、9名がミディアム、そして2名がハードタイヤでスタート。ハードでスタートしたアルファタウリのピエール・ガスリーとアルピーヌのフェルナンド・アロンソがポイントを獲得した。
• 予選時同様、気温25℃、路面温度28℃の温暖なドライコンディションがレースを通して継続した。
<各コンパウンドのパフォーマンス>
• ハード C3
⇨長いスティントで一貫した良好な性能を示し、レースの鍵だった。フェルスタッペンは、ハードでファステストラップを記録。摩耗とデグラデーションは低く、ハードでスタートした2名のドライバーは、燃料満タンの下で36周のオープニング・スティントを走行し、ハミルトンは44周のファイナルスティントを走行した。
• ミディアム C4
⇨約半数のドライバーがスタート時に装着し、ハミルトンはこのコンパウンドでスタート直後にトップに立った。チームメイトのバルテリ・ボッタスは、30周のオープニング・スティントを走行。予選での5周と合わせて、トータル35周をミディアムで走行したことになる。
• ソフト C5
フェルスタッペンのタイトル獲得に貢献しました。フェルスタッペンは、セーフティーカー終了後にソフトのスピードを活かしてトップに立った。ソフトは期待通りの性能を示した。
マリオ・イゾラ・ピレリ F1およびカーレーシング責任者
「バーチャルセーフティーカーとセーフティーカーの導入が2つの重要な機会となり、チャンピオンシップを懸けた緊迫した戦略的闘いが繰り広げられました」
「マックス・フェルスタッペンは、両方の機会で新品タイヤに交換してハミルトンを捉えようとしました。ハミルトンはステイアウトしてフィニッシュまでタイヤをマネージしましたが、ファイナルラップでフェルスタッペンのフレッシュなタイヤの前に屈しました」
「タイトル争いを演じた2人は異なるコンパウンドでスタートし、このレースが予測不能な展開となったこともあり、最後まで異なる戦略を使用しました。全3種類のコンパウンドは重要な役割を演じ、新しいトラックレイアウトの厳しさにも良く対応してスリリングなフィナーレに貢献しました」
「自身初のドライバーズタイトルを獲得したマックス・フェルスタッペン、
コンストラーズタイトルを勝ち取ったメルセデスを祝福します。記憶に残る緊迫したレースが見られた非常に素晴らしいシーズンでした。13インチタイヤの章を締めくくるにふさわしいシーズを終え、新しい18インチタイヤの時代が幕を開けます」
【STINGER】
photo by PIRELLI