プッシュロッドかプルロッドか!?
F1のプレシーズン・テストが最終日を迎えた。そこで話題になっているのが、ポーポシングと共に、改めて使われている“プッシュロッドとプルロッド”という言葉。そこを中心に、サスペンションが注目を集めている。
簡単にいうと、スペリングとダンパーのセットをどう活用するかによって、デザイナーによってプッシュロッド派とプルロッド派に分類できる。
簡単にいえば、スプリングとダンパーとタイヤのつなぎ方をどうするか。プッシュロッドは“押す”、プルロッドは“引く”。結果としてプッシュロッドは、スプリングとダンパーユニットがモノコック上部に置かれ、プルロッドは、モノコック下側に装着される。
また、“押す”と“引く”を比較すると、同じ加重を受ける場合、“押す”よりも“引く”方が細いロッドで対応ができるという違いもある。
つまり、プルロッドは、ダンパーユニットがモノコック下部に着くので重心的に有利で、さらにロッドが細くできるから、空気抵抗的にも利点がある。
逆に“プッシュロッドは、ロッドにかかる荷重を支える太さが必要になるだけでなく、ダンパーユニットがモノコック上部につくことで、重心が高くなり、ここだけみるとプルロッドが有利に見える。
ただし、ここで問題になるのは、今年のマシンのボディ下面がベンチュリー形状になっていて、そこに効率よく空気を流す必要があるということだ。
別々に考えれば、フロントサスペンションは、空気抵抗的にはプルロッドが有利だが、ベンチュリー形状のためにノーズを高くしたいので、ダンパーユニットが、空気の通り道になるモノコック下に着いていると邪魔になる。ということで、どちらがいいかは簡単には決められない。
正面から見て、ロッドが“ハの字”に見えるのがプッシュロッド、“逆ハの字”がプルロッド式だが、その視点でテストを眺めると、新たな発見ができるかもしれない。
参考までに、各チームのフロントサスペンションは、以下の通り。
レッドブル=プルロッド
メルセデス=プッシュロッド
フェラーリ=プッシュロッド
マクラーレン=プルロッド
アルピーヌ=プッシュロッド
アルファタウリ=プッシュロッド
アストンマーチン=プッシュロッド
アルファロメオ=プッシュロッド
ウィリアムズ=プッシュロッド
ハース=プッシュロッド
プッシュロッドが大勢を占め、プルロッド・フロントサスは、レッドブル、マクラーレンだけ、といううのも興味深い。
【STINGER】
photo by Formulaone.com