ハンガリーGPの殊勲はレッドブルのメカニック!!
わずか15分で、ノーズを換えただけでなく、曲がったフロントサスペンションの交換をやってのけた。
スターティング・グリッドに向かうコース中央部分の下り区間で、フェルスタッペン+レッドブル・ホンダがコースを外れ、エスケープ・ゾーンで止まりきれずにタイヤ・バリアにフロントから突っ込んだ。
フロントウイングはちぎれ飛び、フロントサスペンションも破損。万事窮すと誰もが思った。
しかし、レッドブル陣営はあきらめていなかった。フェルスタッペンは手負いのマシンをグリッドに運び、そこからスタートまでの15分少々、レッドブルのメカニックは神業的な作業を敢行した。
3番手グリッドに停められたマシン。状況を見極め、まず、フロントノーズが交換され、フロントサスペンションのトラックロッドの交換が行なわれた。
大慌てしてもおかしくない状況で、メカニックの落ち着きぶりは見事だった。すべての作業を終え、各部の確認と並行して、タイヤ装着リミットのスタート5分前まで1分のところで、フロントタイヤがインパクトレンチで締められた。無観客でなかったら、場内はスタンディングオベイションが贈られるところだった。
フェルスタッペンは、「あの瞬間に、レースが終わったと思ったけれど、メカニックのおかげ。感謝しかない」という思いを集中力に換え、そのマシンで、終盤に追いすがってきたメルセデスのバリテリ・ボッタスを抑えきった。
2020F1GP第3戦ハンガリーGPの殊勲賞は、しぶとく走りきったフェルスタッペンと、F1GPが“チーム戦”であることを思い出させてくれたレッドブルのメカニックだった。
[STINGER]山口正己
photo by ASTONMARTIN REDBULL