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ロス・ブロウン メルセデス発表会会見全録 3/3

今の話の延長ですが、1998年のハンガリーでは到達すべき課題を成し遂げるべく、レース中にマイケル
に19周連続にも及ぶ予選と同様のラップを刻むよう指示しましたが、彼は当時20代であり、現在では40代である彼に同じような状況で同じようなパフォー
マンスを期待できますか?

ブラウン 大丈夫だろう。様々な研究によれば、身体的ピークは30代という結果もでている。もちろん、どの競技をしているかにもよるが、マイケルについては現役時代と変わらぬ身体的能力、持久性をすでに示しているため、全く不安はない。質問
のような状況にも応えてくれるだろう。マイケルは素晴らしいアスリートであるということを忘れてはいけないし、レーシング・ドライバーは関節を痛めたり、
サッカー選手のようにひざを痛めることもない。F1を走らせる身体的能力とは力とスタミナのことだ。マイケルは現在でもあらゆる困難な状況に問題なく対応
するだろう。

マイケルはいつ、この仕事を引き受けると返事をしたのですか?
ノルベルト・ハウグ(以下、ハウグ) チームとして、マイケルを迎えるための責任者はロスだった。迎えようという発想はかなり以前からあったことは認めざるを得ない。以前からその構想はあったけれ
ど、実現させるというのはまた別の話であって、マイケルとのコンタクトはロスがとっていた。マイケルからの基本的合意のYesがあったのは09シーズンが終わった頃だった。

ロス、あなたは、マイケルは身体的、精神的、そしてレースにまつわるほかの全ての状態が完全ではなければ復帰しないと信じていますが、それと同時に彼が再びレースをしたい一心で自分の状態を意識的・無意識的関わらずに偽っている可能性もあると思いますか?
ブラウン その可能性はあるし、彼が走り出すまでそれは誰にもわからないことだ。だが逆説的に見れば以前よりパフォーマンスが劣っていると捉える理由もないだろう。
06年シーズン末は彼のキャリアの中でも力溢れるレース展開だった。よって彼のパフォーマンスを信じない理由はないし、どのドライバーだってシーズンが終わって次のシーズンまでにリセットし、リフレッシュし、自分を信じて新たなシーズンに臨む。マイケルも同様であり、彼の能力は疑っていない。彼自身が納得
する結果を獲得するには2〜3レースほど要するかもしれないという見方もあるが、僕自身は彼が最初から非常に高いレベルの走りを見せてくれると思ってい
る。

ノルベルト、メルセデスはチームのパートナーだった今までの体制から、チームを所有する今の体制となって、エンジニアリングの観点から、そして総合的な視点からもどのように変わっていくかお聞かせください。
DSC_2124.jpgハウグ これについてはたくさんの議論がなされてきたが、我々は優れたチームとして15年間いい関係で付き合ってきたし、最高の結果をおさめてきた。この機会に改め
てチームに感謝を述べたい。そのように捉えたとき、今回の変化で内部の協力関係が大きく変わることはないだろう。エンジンについては我々が責任を持っているし、チームもパートナーも現在素晴らしいものとなっている。我々はマーケティングとメディア対応についても取り組んでいくし、あなた方メディアからの意見や要望も聞いていきたいし、可能な限りそれに対応していきたいと思っている。我々の狙いは2つの会社を今まで以上に融合させ、ハイパフォーマンス・エンジンに取り組んでいきたいということ。ブラックリーにあるメルセデス・グランプリ・チームとは40マイルしか離れていなく、同じエリア内にあるといえる。
このため、今まで以上に経済的にも節約が可能であり、さらなる効率化を進めることで、さらなる節約を果たすことも目標としている。後ほど、ここのミュージアムで正式なボーン・ミーティングを行い、ドイツのメルセデスカー・グループの研究・技術・開発責任者のドクター・トーマス・ウェバーを迎えてプレスカンファレンスを行うが、協力関係は非常にいいものであり、去年11月におきたことを考えれば、まだこれからたくさんの課題が降りかかってはくるが、そこからいい方向へといい加速ができたと思っている。市販車を見れば、いかにフォーミュラ・カーとリンクしているかが見て取れるし、これらの商品をモータースポーツを通じてプロモーションしていきたい。私達の伝統的なマーケットに加えて、特にF1に対して情熱的な新たなマーケットにおいて、これらの商品をアピールするにあたり、F1は非常に効果的なツールだと認識している。それに、5年前に比べれば効率化により金銭的負担も少なくなってきている。結果として
勝利を納めるチームとなれば全てがいい方向へいったことになる。もちろん、いい結果を期待しているが、今年のチャンピオンシップは今まで以上に厳しいもの
になると思われる。しかし私はこの活動全てにおいて前向きな気持ちでいるし、結果もついてくると信じている。


ルベルト、つづいて質問を一つ。メルセデスがF1に参加すると、30年代や50年代がそうであったように、圧倒的な結果を残すことが多かったです。世界的
な自動車産業の現状が苦しいこの時期に、再び参戦する判断をした背景には、力を注ぐだけの価値があるとみてギャンブルに打って出たということでしょうか?
また、この情勢だからこそ、メルセデス側から早い段階での結果を示すよう要請などあったのでしょうか。

ハウグ まず、ギャンブルでF1は勝てない。それは確かなことだ。我々はF1で常に成功を収めてきたし、マクラーレンの株も40%保有している。我々以上の成功とい
えばフェラーリが収めてはいるが、60タイトル、223勝という数字は間違いなくトップメーカーであることの証だ。だが、同時にあなたの言う30年代、
50年代には圧倒的勝利の時代があったことも事実。しかし、09年シーズンのような展開を見ると、もはやあのころのシーズンを通しての圧倒的な力の差はうまれにくい。これはギャンブルではなく、純粋に仕事の積み重ねであり、その仕事の内容が競合する相手よりいいものでなければならないというだけの話だ。競合するチームたちもタフであり、高い能力を持っているだけに、簡単なことではないが、我々の狙いであるメルセデス商品のプロモーションのために勝たなけれ
ばならず、このセグメントでの基準ではこのマシンが絶対に一番速いマシンでなければならない。それに、勝利に向けての体制は整っていると信じている。確か
に今までの歴史を見ればF1において成功を収めてきた我々だが、たとえこのシーズンですぐに結果が出なくとも、勝利のためには力を惜しまない信念をもっ
て、近い将来に必ず成功を収める。

ロス、ジェンソンが他のチームにいくことが決まる前、彼はあなたと共に新たなマシン開発に関わっていることを認めていました。彼があなたが開発した内容を他のチームにもたらす心配はないですか?
ブラウン ドライバーはマシンの弱さを見出す役割であり、彼らのアドバイスによりマシンの弱点を消していく。ジェンソンはマシンの弱さの発見という意味では大いに開発に関わっていたが、それらの解決策や中身の部分についてはドライバーの知るところではない。よってそういった心配はない。

今年のライバル達の中で最も強力なチームはどこですか? そして、それらのチームの開発にも目を向ける機会はありましたか?
DSC_2382.jpg
ブラウン 歴史的に見てもフェラーリ、マクラーレンは強いはずだ。これにレッドブルも加わった。これらのチームが強いのには人材や資金、援助といった理由があるためだが、直接のライバルとなりやすいのはこの3チームだろう。しかし、この他にもルノーやウィリアムズといった非常に優秀なチームがいいパフォーマンスを見せる可能性が高い。こういった予想がある一方で、ふたを開けてみなければわからないのがF1だ。バレンシアのテストでは、より身近にライバル・チームの状況を見ることができるが、テストからバーレーンまで5週間あるため、マシンを見直す時間も十分にあり、我々と同様に、他のチームもまた大幅なアップデートを行う予定だろう。ライバルのマシンを見るのはバレンシアが初となる。シーズン終了から最初のテストまではある意味隔離された、真空状態のような中での作業
だ。他チームが何をやっているかは見ないため、ライバルがどのような進み具合なのか分からずに、自分が開発しているマシンにありったけの力を注ぐ。現在のマシンの仕上がりには満足しているし、バーレーンまでにはさらに満足のいく仕上がりとなっているだろう。しかしそれがライバルを打ち負かすのに十分なパ
フォーマンスとなっているかはわからないし、もし十分ではなかったとしたら、今までの倍の力を注いで満足のいくレベルまで迅速に高めるだけだ。

ロス、ナンバーワン、ナンバーツー・ドライバーの話に戻るのですが、ゼッケン3をマイケルが希望したことでニコが3を譲り、ゼッケン4としたことに関しては何かドライバーの順位を暗示するものはあったのですか?
ブラウン それは全く関係なかった。マイケルがタイトルを取ったシーズンは全て奇数ナンバーだったという縁起を担ぐためにゼッケン3を希望し、ゼッケンにこだわらない
ニコが3を譲り、ゼッケン4としたというだけの話。ドライバーの優先順位は関係なく、ニコがこだわらないのであればマイケルの希望を聞き入れない理由はない。マイケルも奇数が好きだとはいえ、8回目のワールドチャンピオンを獲得することになったら『偶数だからイヤだ』とは言わないだろう。両ドライバーに
とって本当に欲しい数字はゼッケン1のはずであり、それは自分でとりに行くしかない。

(Translation by Noah Sellen / Photo by Akiko Samesima)

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