注目ドライバーは3人
開幕戦で最も注目すべきチームはロータスである、と書いた。もちろん、エースのキミ・ライコネンが要マーク。チームメイトもグロジャンが、今年も暴れグセが治っていないかどうか、というのも注目ポイントではあるが、ライコネンがどんなポジションでレースを進めるのかが最も気になる。
そして、もう二人、注目のドライバーがいる。マクラーレンからメルセデスに移籍したルイス・ハミルトンと、その後釜としてマクラーレンのステアリングを握るセルジオ・ペレスである。
◆L.ハミルトンの人生設計
L.ハミルトンは、2007年の衝撃のデビュイヤー以来、マクラーレンの顔だった。幼年時代に、初対面のマクラーレン・グループ会長であるロン・デニスに、”ボクは将来アナタのクルマでワールドチャンピオンになります”と大見得を切ってデニスをコロリとやっつけ、そしてそれを実現して見せた。ハミルトンとマクラーレンの関係は蜜月だった。しかし、それが、去年辺りからきな臭い匂いが立ち始めていた。
それまで、チーム内で、L.ハミルトンを悪く言う者はいなかった。だが、L.ハミルトンの行動を、”俳優気取り”と指摘する声が聞こえ始めていたのだ。レースで勝つことよりも、名を挙げることに興味が移った、と。
J.バトンが、ワールドチャンピオンを奪った余勢を駆って2010年にマクラーレン入りしたとき、パドックの意見は、おしなべてJ.バトンの選択ミスを指摘した。天才L.ハミルトンのチームメイトでは、一生浮かばれない、と。しかし、その予測は見事に外れ、J.バトンはL.ハミルトンを追い出す形になった。
もちろん、バトンの力で押し出されたのではない。ハミルトンは、マクラーレンの”日常”に飽きたのだ。そして新天地メルセデスで、新たな人生を歩き始めた。この人生設計のリセットがどう出るか。メルセデス関係者は、そして、たぶんハミルトン自身も、2013年は準備の年、と理解しているはずだが、遅いクルマにハミルトンが我慢できるかどうかは見物だ。
メルセデス陣営の中には、こんな期待の声もある。”年老いたドライバーより、イキのいいドライバーなら、同じクルマでも1周コンマ5秒は速くなる”。年老いたドライバーがM.シューマッハで、イキのいいドライバーがL.ハミルトンか。
たしかにM.シューマッハは2010年から3年間の58戦中で、N.ロズベルグより予選が速かったのは僅かに13回のみ。L.ハミルトンならそうはならないだろう。だが、計算どおり行くかどうか、N.ロズベルグとのガチンコバトルにも注目だ。
◆ペレスのプレッシャー
セルジオ・ペレスのマクラーレン入りは、最近にない大抜擢に見える。粗削りのペレスをなぜマクラーレンが取ったか。メキシコのテレメックスという巨大スポンサーを当て込んで、将来を見越しての起用、という見方もできるが、いずれにしても、L.ハミルトンの代役としてはいささかポテンシャル不足に見える。
しかし、J.バトンがマクラーレン入りしたときに、”人生最大の間違い”という声に賛同した[STINGER]としては、またまた同じ過ちを犯す可能性がない、とは自信を持っては言えない。
ただし、マクラーレンに決まった後のシーズン終盤、去年の日本GP以後のペレスをの成績を見る限り、まったくいいところがないのも事実だ。同僚の可夢偉が24ポイントを獲得したのに対して完走ゼロである。
関係者の中には、可夢偉は、フェラーリのサードドライバーもいいけれど、マクラーレンがペレスに愛想を尽かすところを狙ってピッタリとマクラーレンのスリップに入っているのも悪くない、という声もあるくらいだ。
しかし、マクラーレンが打算で契約を決めるとも考えにくい。その証拠に、ペレスは、バルセロナ合同テストの2日目に、キッチリトップタイムを記録した。それも、S.フェッテル(レッドブル)を押さえ込んで唯一の1分21秒台、である。
ハミルトンとペレス。いずれにしても、二人の”新人”には注目!!だ。
[STINGER]山口正己