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開幕戦を占う—その7 シーズンオフ・テストから見えた!!

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フェラーリの英断?!

フェラーリは、サスペンションの変更が注目を集めている。レッドブルが成功し、他チームがこぞってリヤ・サスペンションに踏襲したものの、フェラーリが拒んでいた”プルロッド・サスペンション”を今年から採用したからだ。それもリヤだけでなくフロント も、ということで話題を呼んでいる。

サスペンションは、タイヤの動きを制御して、接地面が効率よく路面に接するようにするのが役目。路面からの入力を、”しなやかに吸収”するために、スプリングとショックアブソーバーがセットになったスプリング・ダンパーユニットがついている。スプリングだけだと、いつまで経っても伸び縮みを繰り返してしまうので、スプリングのなだめ役としてショックアブソーバーが装着され、スプリングの動きを収束させる働きをする。

そのスプリング・ダンパーユニットにタイヤからの力を伝えるために、ロッド(棒)が必要だが、タイヤからの力を押して伝えるのがプッシュロッド、引っ張って伝えるのがプルロッドだ。現在のF1は、プッシュロッド式とプルロッド式のいずれか、である。

一見同じように見えるが両者には微妙な違いがある。”押す”と”引く”で物理的に同じ力を受けるなら、引く方がロッドが細くて済む。押す方がロッドの強度が必要になり、それだけ太くしなければならない。

フロント・サスペンションを前方から、もしくはリヤ・サスペンションを後方から見て、タイヤから斜めに伸びるロッドの車体側付け根が低くなっているのがプ
ルロッド。タイヤが持ち上がると、ロッドがスプリングを引っ張る形になる。スプリングを押す形のプッシュロッドは、その反対に車体側付け根が高い位置にあ
る。

いずれも、空気の流れの中にロッドはさらされる。そこだけを考えれば、空気抵抗を少なくすることから、ロッドは細い方がいいから、プッシュロッドの方が理に適っている。ただし、別の事情もある。

プッシュロッドとプルロッド.jpg

タイヤからの入力をロッドを介して受け止める部分が、プルロッドでは車体の下側につき、プッシュロッドでは、車体の上側につくことになる。大きな力を受ける部分なので、それなりの強度が必要になり、その部分はある程度の重量と大きさになる。重量物がプッシュロッドは車体の高い部分にあり、重心位置を低くしたいレーシングカーとしては、プルロッドにして、重心を下げるようにしておきたい。

ただし、さらに別の観点もある。プルロッドにすると、車体の下側に入力を受け取る固まりが付く。現在のF1マシンは、ボディ下側にスムーズに空気を流してダウンフォースを稼いでいるから、ボディ下側、特にフロント部分は、できる限りスマートにしておきたい。この観点からは、取り付け位置に制約ができ、プルロッドは必ずしも有利とは言えない。

いずれにしても、ひとつの用件だけでなく、周辺の状況からベストの選択をする。ということで、プルロッドにしたから速くなるか遅くなるか、という議論は、実は一面的で、フェラーリのポテンシャルが上がったとしても、それはプッシュロッドにしたから、というだけの単純な理由では決められない、ということなのだ。

さて、サスペンションに興味が出たら、まずはフェラーリの正面と後方からの写真をこちらでとくとご覧あれ。

フェラーリ 「F2012」 フロント
フェラーリ 「F2012」 リヤ

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